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志尊淳、『トドメの接吻』『女子的生活』で証明した“実力派若手俳優”の力量

2018/03/19 21:00

 金曜午後10時から放送されていた本作は、トランスジェンダーを題材にしていて、志尊が演じたのは、体は男性だが心は女性。そして恋愛対象も女性という小川みき(幹生)。みきはアパレルメーカーで働き、合コンに参加して女性を口説いては刹那的な関係を結ぶという日々を送っていた。そんなある日、同級生だった後藤忠臣(町田啓太)がアパートに転がり込んできたことで、みきの日常が少しずつ変化していく。

 志尊が演じるみきは、ひと昔前ならオネエキャラとしてコミカルに描かれていた存在だ。しかし、そういった目線は本作にはなく、偏見に晒されるみきの強さと困惑を描いている。本作が面白いのは、みきの悩みがトランスジェンダー独自のものではなく、人間関係の悩みや歳をとったら自分はどうなるのか? という現代人が抱える普遍的な不安だということだ。

 近年、性的マイノリティに対する配慮がフィクションに求められるようになってきているが、こういった作品を作る時に難しいのは、対象への距離感だ。差別的に笑いの対象とするのは論外だが、だからといって過剰に神格化して聖人のように描くことも問題である。

 みきは悪い意味で、女性としての自分を過剰に内面化しているところがある。オシャレにうるさく、他人を値踏みしているようなところもあり、正直言って嫌な奴だ。だがそれが、人間臭さにつながっており、特別な存在としてみきを描いていないことがよくわかる。

 ちょっとした演技のさじ加減で見え方が変わってしまう難しい役のため、志尊も相当頭を悩ませたことだろう。しかし、彼は見事に演じきった。『トドメの接吻』の和馬もそうだが、過剰な設定が盛り込まれたキャラクターを、愛嬌のある自然な存在として演じられる力量が彼にはある。

 すでに、連続テレビ小説『半分、青い。』(NHK)の出演も決まっている。今年が終わる頃には実力派若手俳優として誰もが認める存在になっていることは、間違いないはずだ。
(成馬零一)

最終更新:2018/03/21 21:09
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