トランプ『女性キャスター「知能が低く」「クレイジー」「整形手術で出血」』ツイートに寄せられた二種類の批判

 アメリカ合衆国第45代大統領のドナルド・トランプが、またもやツイッターで女性を侮辱した。今回のターゲットはMSNBCの朝のニュース番組「モーニング・ジョー」のキャスター、ミカ・ブレジンスキーだ。

 以下はトランプが6月29日の8:52am, 8:58amにおこなった連投ツイート。

「視聴率低迷の『モーニング・ジョー』がオレの悪口を言ったと聞いた(あの番組はもう観ていない。)だったらなぜ知能が低くてクレイジーなミカが、アタマのおかしいジョーと一緒に」「大晦日のあたりにマールアラーゴに3夜連続でやってきて、オレと一緒に過ごそうとしつこかったんだ。彼女はフェイスリフト(整形手術)でひどく出血していた。オレはノー!と断った」

※原文には時制が正しくない部分があり、意味が通るように訳した

 あまりにも唐突な内容で当初はまるで意味不明であったが、多くの政治家や識者が党派も性別も超えて怒り、呆れ、そして憂い、さまざまなコメントを発した。以下はそのごく一部である。

ナンシー・ペロシ院内総務(民主党)
「性差別主義者、報道の自由への暴行、そして、すべての女性への侮辱です」「あのような振る舞いは米国大統領の品位に叶うものでなく、大変に悲しく思いました」「共和党員が(トランプの振る舞いの)ほぼすべてに耐えられることが理解できません」

ポール・ライアン下院議長(共和党)
「明らかに、ふさわしいコメントには思えません。我々は今、社会的規範とディベートのトーンを向上させようとしているのに(大統領のツイートは)それに貢献しません」

ベン・サッセ上院議員(共和党)
「どうか止めてください。(あのツイートは)普通ではなく、大統領の品位に欠けています」

アナ・ナヴァロ(共和党ストラテジスト、CNNコメンテイター)
「この最低な男はアメリカ合衆国大統領」「以下は共和党員へ。私は『落胆した』『困惑している』『イラつかせられる』『彼がこんなことをしなければと願う』といった言葉にうんざり!」「(共和党議員はテレビで)『よく聞け、このクレイジーで頭のおかしい70歳の赤ん坊。止めろ!お前は今、アメリカ合衆国大統領なんだ、最高司令官なんだ』と言うべき」「(こんな状態では)税金や医療保険について語ることもできない」

「小さな手(子供)のために作られています」(朝食シリアル、チェリオの箱)

※選挙選中よりトランプは話すときに手をヒラヒラさせること、その手が小さいことが定番ジョークとなっている。写真はトランプの「小さな手」と「子供っぽさ」の二重の意味と思われる

【ミカ・ブレジンスキー】テレビジャーナリスト。1967年、ニューヨーク生まれ。1990年にテレビジャーナリストとしてのキャリアを始め、2007年よりMSNBC「モーニング・ジョー」のキャスターとなる。元共和党議員である同番組のメイン・キャスター、ジョー・スカーボロと民主党のミカの絶妙なトークが人気。今年5月4日、ミカとジョーは婚約。娘の婚約の22日後に他界した父、ズビグネフ・ブレジンスキーは1960年代にL・ジョンソン大統領顧問、1970年代はカーター政権の国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めた政治学者。兄のマーク・ブレジンスキーはオバマ政権下でのスイス大使。

◎トランプ、雑誌の表紙はフェイク

 トランプが唐突に「モーニング・ジョー」を攻撃したのは、その2日前にワシントン・ポスト紙が報じた「タイム誌のフェイク表紙」が理由と思われる。世界中に散らばるトランプ経営のゴルフ場のうち、少なくとも5カ所にトランプが表紙となった雑誌『タイム』が額縁に納められて飾られているが、その表紙が「フェイク」であるというすっぱ抜きだった。飾られている表紙にはトランプの写真と、トランプのテレビ番組「アプレンティス」を褒め称えるフレーズが書かれているが、タイム誌はワシントン・ポスト紙の取材に対し、「その表紙の号は発行していない」と明言した。

 この件を「モーニング・ジョー」も報じた。同番組を放映しているMSNBCはリベラルな局として知られ、キャスターのジョーとミカは大統領選中より厳しいトランプ批判を続けていた。批判に対してトランプはミカを「神経症」と呼ぶなど、両者の仲はそもそも険悪だった。そして今回のフェイク表紙報道でトランプは再度激怒し、上記のツイッター乱行と相成ったものと推測される。

 この件を受け、ジョーとミカはトランプのツイート翌日にワシントン・ポスト紙に事態を説明する記事を寄稿し、さらにその翌日には休暇を返上して「モーニング・ジョー」に出演し、トランプのツイートの内容こそが「フェイク」であることを語った。

 ツイッターでトランプが持ち出した「マールアラーゴ」はフロリダ州にあるトランプの別荘だ。トランプは11月の大統領当選後、1月の就任式後もほぼ週末ごとに訪れており、以後、ちまたでは「ウィンター・ホワイトハウス」と呼ばれている。

 マールアラーゴはリゾートホテルとして一般客室も持つ。ゴルフ場もあり、今年2月に安倍首相がホワイトハウスで日米首脳会談を行なったのち、ふたりでマールアラーゴに赴き、ゴルフを楽しんでいる。このゴルフ場のクラブハウスにも先のフェイクの表紙が飾られていたと報じられている。

 トランプのツイッターでの主張は、すでに大統領選に勝利していたトランプがマールアラーゴで主催した昨年の大晦日パーティに二人が招待してくれとせがんできたが断ったというものだ。

 一方、ワシントン・ポストの寄稿記事の内容は、トランプが二人を12月30日のマールアラーゴでのディナーに招待したがミカは断り、ジョーだけが参加。ディナーの席でトランプがミカを連れてくるようジョーに依頼したため、翌日は二人でマールアラーゴを訪れるも、その夜の大晦日パーティへの度重なる招待は丁重に断り、短時間でマールアラーゴを後にしたという内容だ。ミカの整形手術についても、受けたことはないと書かれている。

 記事中に「決して終わらないトランプ氏の女性の血に対する妄想」というフレーズがある。これは大統領選中、フォックスニュース局の女性キャスター、ミーガン・ケリーに対して「どこであれ出血している」と、ケリーが生理中で気が立っていたことを意味する発言を行い、物議を醸したことを指している。

◎女性差別よりも、国政を憂う

 女性への生々しい侮辱を続けるトランプだが、今回の件についての抗議は男女も党派も問わず、「セクシスト(性差別者)」「ミソジニスト(女性嫌悪)」であることへの批判よりも、「大統領としてあるまじき行為」「政治を行え」「精神状態を憂う」といった内容となっている。先に挙げたコメントでもナヴァロ共和党ストラテジストは富裕層への減税問題や医療保険(オバマケア廃止)問題こそ今、語るべきであると激怒している。ライアン下院議長の「社会的規範」は、6月に起こった事件を指している。ワシントンD.C.近郊で共和党の議員や職員による野球チームが翌日の試合に向けて練習をおこなっていた際、男が乱射を始め、議員1名が亡くなり、男は警官に射殺された。犯人は偏執的な反トランプ派であり、大統領選中は民主党候補のひとり、サンダース上院議員のボランティアを努めていた。

 ミカ本人も「(ツイートの件は)私についてよりも、私たちの国についての、もっと大きな問題を提示しています」と語っている。トランプの発言内容そのものより、大統領がテレビばかり観(本人は観ていないとツイートしているが)、気に障る報道があるたびにメディアへの怒りを拙い言葉で爆発させていることを深く憂慮しているのだ。メディアの中にはトランプの精神状態が「メルトダウン」しているとするものもあった。

 そもそもトランプ政権は、過去の政権の習慣と伝統であったホワイトハウスでの記者会見を極度に制限している。記者会見を仕切るはずの報道官が記者の質問に答えられずに感情的になることが続き、その様子が度々パロディにされた。それもあり、特定のメディアを記者会見から締め出す、記者会見にテレビカメラを持ち込ませず、一般市民には音声だけを提供させるといったことを続けており、アメリカが掲げる表現の自由、報道の自由の侵害だとしてメディアの怒りは限界に近づきつつある。そうした中、トランプ自らによって、テレビジャーナリストへの常識では考えられないレベルの個人攻撃が発せられたのである。

 それでもやはり、整形手術を持ち出すなどトランプの女性差別の問題も無視できない。ミカはトランプ政権上層部の女性が声を上げることを望んでいる。しかし、報道官のサラ・ハカビー・サンダースはトランプ擁護を続けている。トランプの長女で、大統領補佐官として女性の労働環境問題に取り組んでいるはずのイヴァンカ・トランプは沈黙。ファーストレディとして「インターネットでの虐め問題」に取り組むと宣言したメラニア・トランプも、やはり沈黙している。

 トランプ自身は先のツイートが激しく批判された直後、7月1日に以下のツイートをおこなっている。

「クレイジーなジョー・スカーボロと、石ころみたいにマヌケなミカは悪い人間じゃない。だが、彼らの低視聴率番組はNBCの上層部によって支えられている。なんてこった!」

 攻撃の矛先を微妙にミカとジョーから局の上層部に移し、同時に再度CNNを「フェイク」「マスゴミ」と呼んで新たな攻撃ツイートを連投。翌2日には、トランプ自身がプロレスの場外で「CNN」を叩きのめすパロディ・ビデオをツイッター上でにアップしている。

(堂本かおる)

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