カルチャー
ペットと人のこれからを考える

「動物への愛情だけではない」ビジネスとして見る、“生体販売をやめたペットショップ”のあり方

2016/10/30 16:00
これまで引き受けた保護犬は月1~1.5頭ペース。店内で丁寧に飼育されているのがわかる

――蛇口というのは、捨てる人ではなく、売る人のことですね?

澤木 そうです。もともと無責任な飼い主は、無責任な販売があってこそ生まれます。ペットショップ側が、お客さんに「この子は、15年は生きます。15年飼うには何百万かかりますよ」などとしっかり説明すれば、そんなに無責任な飼い主は多くは出てこないはず。業界の中には「客が来たら、犬を抱かせれば勝ちだ」と言う人もいて、ほとんどの店がそういう売り方をしていますね。飼い主が飼えなくなったときの始末を自分たちでつけるならともかく、行政とボランティアに押しつけているのは、絶対におかしい。自分たちだけうまいところを摂取するのは、あり方としていびつだと思います。

■「改正動物愛護管理法」施行もきっかけに

――とはいえ、売り上げの主要部分であっただろう生体販売をやめるのは、簡単な決断ではなかったと思います。

澤木 ビジネス的な視点で言えば、13年に「改正動物愛護管理法」が施行されたことが大きいです。生体販売に対する法律的な締め付けが始まり、生後56日を経過していない犬猫の販売が禁止され、ネットのみの取り引きや午後8時以降の販売展示も禁止になりました。あまりに幼い犬猫を親から引き離すことや、夜間に眠らせないなどの虐待ともいえる販売方法に対して、世間的に批判の声が上がったからこそ行政が動いたのであって、これは今後、ゆるくなっていくことは絶対にないと考えています。

 世間の動きと法と、全てに鑑みて生体販売を続けることは果たしていいことなのか。このまま続けるよりも、業界内部から命を救う方向へ変換し、生体以外で利益を上げていく方が、はるかにビジネスチャンスが広がるのではないかと考えたんです。そういうことを親会社に一通り説明しました。なので、決して犬に対する溢れる愛情ばかりで始めたことではないんです。

――生体販売の売り上げが失くなった分は、どのように補っているのでしょうか?

澤木 ペット関連アイテムの販売でまかなっています。里親さんになっていただいた方の中には、最初の犬はペットショップで買ったけれど、その子がすごく可愛くて、犬のことをどんどん調べていくうちに、生体販売に納得いかないと感じ、「次は絶対保護犬をもらうと決めていた」という人もいます。保護犬を里親として迎えることに強い意味を見いだしてくれている方たちが多いので、うちの店自体に対しても、非常に強い思い入れを感じてくださるようです。なので、そういった里親になった家族が、そのままずっと継続して、うちの商品を買う顧客になっています。

――先ほど、「親会社に説明した」と言っていましたが、親会社は別の業種なんですか?

澤木 この店を経営しているのは、人材派遣会社なんです。そこの新規事業として、11年前にペットショップ事業を始めました。社員とコンサルタントが市内を歩き回って、新規参入できそうな業界を探したんです。その1つがペットショップでした。よそは衛生状態も接客態度もよくない店が多かったため、これなら業界に後追いで参入しても十分勝負できるだろうと判断したようです。

――他店の問題点を改善すればいい、ということですね。

澤木 ただ、うちのショップは開業時は生体販売をしておらず、アイテム販売のみ。その後、生体販売業者さんから委託販売のお話をいただき、アイテムとペットの両方を扱うようになった流れです。その際、他店の弱点である衛生問題、接客、そして商品力。この3つは絶対に崩さないことを方針として決めました。ちなみに開業時に8人採用したのですが、ペット業界経験者はその中で2人だけ。あとは接客を重視して、アパレルや飲食の経験者を中心に採用しました。

――生体販売をやめた今、物販による収益で経営していくとなると、接客業経験者のスタッフは心強いですよね。

澤木 もともと生体販売をしていなかったことも、今回の決断に踏み切れるきっかけだったかもしれません。10年ペット業界で仕事をして気付いたんですが、ペットショップは、動物の専門学校を出た人が就職して接客をしているケースが多いんです。平均年齢も24~25歳と若い。うちは5人いる物販スタッフのうち、3人は開業時からのスタッフなので11年目、平均年齢は40歳くらいで、「ペットが好き」というよりも「ものを売るのが好き」な人を採用したいと思っていて、それが功を奏していると感じますね。

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