カルチャー
[女性誌速攻レビュー]「日経ウーマン」7月号

“松下幸之助女子”登場! 「日経ウーマン」が「じじい賛美」をするワケ

2013/06/27 21:00

 
■「日経ウーマン」に吹き荒れる「おじいちゃんブーム」
 
 このように、お金にも人間関係にもシビアなところがある「日経ウーマン」ですが、趣味の読書においてはどうでしょうか。

 ジャンル別の人気本や、書店員・作家・読者のおススメ本が大量に紹介されている中で、特に大プッシュされていたのが、最新作『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(文藝春秋)が刊行されて間もない人気作家・村上春樹。

 「あなたにとって、『村上春樹』とはどのような作家ですか?」という質問に対しての、読者の答えは次のようなものです。「村上春樹さんの小説を読むときは、彼の奥さんになったつもりで読んでいます。なぜこの小説を書くに至ったか、このフレーズは私宛てかな?とか、さしずめ疑似結婚パートナーです」(44歳・建築・アーティスト)、「私にとって、精神安定剤といってもいい存在。彼の生き方、ライフスタイルそのものが、私にとって憧れでもある」(38歳・教育・事務)。作家に対する熱烈な愛が溢れるメッセージばかりですが、いずれも作品内容に言及していないのが疑問でした。しかし、仕事と節約にしか興味のなさそうな「ウーマン」読者をここまで夢中にさせるとは、さすが村上春樹です。

 同じ読書特集において、春樹以上に大きく取り扱われていたのが、現パナソニックの創始者・松下幸之助。幸之助ファンの読者3名による座談会企画のタイトルはずばり、「私たち、“松下幸之助女子”です!」。なんでもかんでも「女子」をつければ今時の女性ウケするコンテンツになると思っているのかもしれませんが、違和感しかありません!! 前号で、起業家・倉持淳子さんの「夢を叶えるノート」に彼の切り抜きが貼られていたのも記憶に新しいですが、「日経ウーマン」はなぜこんなにも松下幸之助を推してくるのでしょうか。

 座談会で、感銘を受けた幸之助の言葉として挙げられているのは、「素直さを失ったとき、逆境は卑屈を生み、順境は自惚れを生む」や、「子どもは磨けば必ず輝く」など、ほかの自己啓発本や育児本にも書いてありそうなものばかりでした。しかし、“松下幸之助女子”は「おじいちゃんに助言を求めて、話を聞いている感じ」「晩年のお写真がすごく素敵」などと語り、幸之助をあがめているようです。お金でも人間関係でも徹底的に無駄を省いて奮闘する「ウーマン」読者は、自分の努力を否定しない優しい「おじいちゃん」の存在を必要としているのかもしれません。

 御年60台半ばの小説家を「疑似結婚パートナー」に仕立て上げ、さまざまな分野で活躍した経営者の晩年の写真を愛でる……。「ウーマン」読者の潜在意識に、ファザーコンプレックスならぬグランパコンプレックス(通称ジジコン)を見た今月号の読書特集でした。
(早乙女ぐりこ)

最終更新:2013/06/27 21:00
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