太田啓子弁護士インタビュー第3回

「それはセクハラです」と声を上げ続けるしかない 刑法改正による強姦罪の厳罰化

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部長、その恋愛はセクハラです!』(集英社新書)

 芸能人の強姦事件から職場のセクハラまで、女性の性的な被害が話題にならない日はない。なぜ被害はなくならないのか? セクシャルハラスメントの問題に詳しい太田啓子弁護士に話を聞く。今回は、刑法改正による強姦罪の厳罰化について解説してもらった。

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■相手の不快感に気づかない鈍感さ、無神経さこそが問題

――セクハラでも、裁判は個別の判断ですから、判決もバラバラの印象があります。

太田啓子弁護士(以下、太田) 司法試験の科目に「ジェンダー」はありませんし、ロースクールでも、司法試験に合格した後に通う司法研修所でも、ジェンダーバイアスの問題を勉強することが必須ではないはずです。ですから、裁判官によって、かなり個人差があるというのが正直なところかと思います。

 法律関係者も、必ずしも、社会内にあるバイアスから自由ではないですから。とにかく根本的には、社会全体で、性暴力とはどういうものか? とか、意に反する性暴力であっても、どうして明確に拒否できないことがあるのか? などの理解が深まらなければいけないとずっと考えています。

――実際には女性の意思には反していたのに、「女性は合意していた」と男性側は思う――というようなことが、どうして起きるのでしょうか?

太田 こういう認識のギャップは、加害者側の「認知の歪み」という言い方が当てはまるかと思いますが、本当にどうして、このシチュエーションで、相手の女性が合意していたとあなたは思えるのか? と感じることがあります。

――「無理やりの強姦」ではなくて、「合意の上でのセックス」と思ってしていた、ということですね。

太田 そうです。

――でも、女性の側は「合意ではなかった」と反論しますよね?

太田 はい。私は、過去に何度か「合意していない」と主張する被害者の代理人を務めていますが、加害者は「セックスなんかしてない!」と反論するかと思いきや、「合意してたじゃないか!」と主張するわけですね。しかし「なぜ彼女が合意してたとあなたは思えるの?」と、呆れることは本当に多いです。

 こういう認識のギャップについては、牟田和恵先生(大阪大学大学院教授)の『部長、その恋愛はセクハラです!』(集英社新書)に大変詳しく解説されていますので、是非お勧めしたいのですが、本当に多くのケースで、男性は「彼女も合意していたはず」だから、「強姦ではない」と言うんですね。そして、そう考えた理由を問うても、よくわからない答えしか返ってこなかったりします。

 たとえば、ある女性新入社員が、職場での歓迎会の帰りに、男性上司に「送る」と言われ、断ってもしつこく「送る」と言うので、やむを得ず上司と一緒に歩き、たまたま一番近道だからという理由で公園を通ったところ、上司のほうは「人気のない公園をわざわざ歩くなんて、俺に気があるんだな」と感じ、彼女にキスをしたと。彼女は嫌だったけれど、上司に強くは抵抗できずにいたところ、上司は「これはいける」と思い込み、その後も頻繁に誘うなど、行為をエスカレートさせていった……など。

 こういう、当事者の認識のギャップの大きさは、本当に驚くほどです。

――男性側に、悪気はないということですね。

太田 そういうことでしょうね。嘘をついているという自覚ではなく、本気で「相手が嫌がっているとは思わなかった」と言っているのだろうと思うことも、よくありますよ。しかし問題は「嫌がっているとは思わなかった」こと自体だと思うのです。相手の不快感に気づかない鈍感さ、無神経さこそが問題です。

 しかし裁判で「合意がなかったこと」とか、「女性が嫌がっていることを男性側が認識していたかどうか」を立証するのは、とても難しいのです。女性はかなりの勇気を振り絞って被害届を出しているのに、法廷で主張が認められないことも多く、さらに傷ついてしまいます。声を上げてもムダだと思って泣き寝入りしている女性は、かなり多いと思います。

あきらめちゃいけない

しぃちゃん

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