弁護士に聞くテレビの疑問

『砂の塔』みたいなタワーマンションに住んだら、どんなトラブルがあるの?

2016/11/18 21:46
towermansion1
Photo by jon from Flickr

「ドラマのこのシーンってありえるの?」「バラエティーのあのやり方ってコンプライアンス的にどうなの?」……テレビを見ていて感じた疑問を弁護士に聞いてみる、テレビ好きのための法律相談所。

〈今回のドラマ〉
『砂の塔~知りすぎた隣人』(TBS系/金曜午後10時~)

■タワーマンションのトラブル例

 菅野美穂主演のドラマ『砂の塔~知りすぎた隣人』(TBS系)。過去作の寄せ集め疑惑がささやかれ、視聴率も低迷中だが、ストーリーは専業主婦の主人公・高野亜紀(菅野)が、一家4人でタワーマンションの25階に引っ越してきたことをきっかけに、住人とのトラブルに巻き込まれる……というもの。

 現実社会でもタワーマンションを巡るトラブルが増えている昨今、実際に起こりやすいトラブルや、被害に遭った際の対処法をアディーレ法律事務所の岩沙好幸弁護士に聞いた。

 まず、タワーマンションで起こりやすいトラブルの中で特に多いのは、パーティールームやゲストルームの予約や利用方法に関する事案だという。

「同じ人が重複して予約を入れて他の人がなかなか予約が取れないからと、やっとの思いで確保したパーティールームでここぞとばかりに盛大なパーティーを開き、外部の人間が大勢立ち入りし、エントランスやロビーなどで騒ぎを起こし、ゴミを散乱させていくというケースも少なくないようです」(岩沙弁護士)

 次に、洗濯物や喫煙等に関するトラブルも見られる。

「外観上の美観等を理由に、規約内で洗濯物を干す場所や喫煙場所に制限を設けていることが多いですが、規約をきちんと読まないことにより、知らないうちに規約違反をしてしまうケースが多いようです。一度くらいであれば注意で済む可能性が高いですが、何度も違反をしてしまうと、悪質と判断され、賃貸の方は賃貸借契約を解除され明け渡しを求められる可能性があります。規約類は事前に十分な確認を行ったうえで、規約違反をしないように注意をする必要があります」(同)

 また、タワーマンションは、居住目的ではなく投資目的で購入をしている人も少なくないため、民泊に関するトラブルも増えているという。投下資本を回収するため、購入した部屋を賃貸ではなく、海外からの旅行者などへの宿泊用として利用させるのだ。

「外部の人間の出入りが増え、規約上禁止されている行為が横行したり、本来高いといわれているセキュリティ上の問題が生じることもあります。最近では、規約内で民泊を禁止するタワーマンションも増えているとも聞きます」(同)

 では、こうしたトラブルで損害賠償などを請求することはできるのだろうか。

「まず、トラブルを起こした本人に故意または過失が認められ、そのトラブルにより損害が生じた場合には、民事上の損害賠償請求ができる可能性があります。パーティールームやゲストルームの重複予約については、そもそも『予約ができないこと=損害が発生した』とは考えにくいので、請求はなかなか難しく、やはり規約でルールをきちんと定めておくことが重要になってきます」(同)

 つまり、共有部分であるパーティールームやゲストルーム、ロビーやエントランスなどで騒がれたり汚されたりしたとしても、個人の財産が損害を受けたといえない場合は、泣き寝入りということになる。しかし、たとえば上の階の洗濯物やタバコが落下して、自分のベランダが汚れたり破損してしまったといった場合は、請求できる可能性は高いという。

 一方で、思いがけず自分が逆の立場になる可能性もある。

「民事上の責任のみならず、物を不注意で落下させたことにより、怪我を負わせてしまったり、最悪死亡させてしまった場合には、過失傷害罪や過失致死罪、不注意ではなく危害を加えるためわざと落下をさせた場合には、傷害罪や落下させた物の形状や状況によっては、最悪殺人(未遂)罪など、刑事上の責任を問われる可能性もあります」(同)

 トラブルの被害者にはなりたくないのはもちろんだが、無自覚な加害者にならないように万全な注意が必要だ。

アディーレ法律事務所

 

最終更新:2019/05/21 20:08
高層マンション症候群(シンドローム)(祥伝社新書224)
落し物には気をつけよう
アクセスランキング