映画レビュー[親子でもなく姉妹でもなく]

年上女が若い女に“友情”を強いるとき――『あるスキャンダルの覚え書き』、女友達への欲望

2016/09/30 20:30

――母と娘、姉と妹の関係は、物語で繰返し描かれてきました。それと同じように、他人同士の年上女と年下女の間にも、さまざまな出来事、ドラマがあります。教師・生徒、先輩・後輩、上司・部下という関係が前提としてあったとしても、そこには同性同士ゆえの共感もあれば、反発も生まれてくる。むしろそれは、血縁家族の間に生じる葛藤より、多様で複雑なものかもしれません。そんな「親子でもなく姉妹でもない」やや年齢の離れた女性同士の関係性に生まれる愛や嫉妬や尊敬や友情を、12本の映画を通して見つめていきます。(文・絵/大野左紀子)

■『あるスキャンダルの覚え書き』(リチャード・エアー監督、2006) バーバラ×シーバ

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 友達付き合いって、ちょっと面倒。そんなふうに感じたことが、子どもの頃にあった。

 少し親しくなると、何でも「お揃い」を持ちたがる友達。クラスのほかの誰かとしゃべっていると、必ず割り込んでくる友達。いつでもトイレにぴったりついてくる友達。「私、あの子嫌いだから付き合わないで」と、交遊関係を指示してくる友達。「自分も言うから好きな男子の名前を教えなさい」と強要する友達。ちょっと間違いを指摘すると「友達なのに!」とすねる友達。

 そして、いったんすねると徹底的に無視されたり、隅でコソコソ何か言われたり、あらぬうわさを立てられたりする。面倒くさいなぁ、友達って。というか、女子だから面倒くさくなるのか?

 もちろん同性の友達は大切だ。子ども時代だけでなく、生涯を通じての女性同士の付き合いには、男性同士にはない独特の濃さがある。半面、「唯一無二の親友」というイメージが膨らみすぎて、相手との過剰な一体感を求め、些細なことに嫉妬心を抱くケースも、女性同士に多いのではないだろうか。

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