川上澄江氏×ルーシー・クラフト氏のトークショー

実母に複雑な感情を持つ娘たちが「母親」になって見つけた、「いい母親」の条件とは……

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左が川上澄江氏、中央がルーシー・クラフト氏

 育ててくれた恩義は感じているけれど、同時に傷つけられたことが忘れられない。一見問題のないように見える親子でも、そんな葛藤を大人になっても抱えている人は少なくない。特に、母と娘という同性同士の関係は、わかり合えるという期待が大きい分、理解できないときに深い傷を残すことがある。しかし、どんな親子も年を重ね、生きている限りは親が先に老いていく。病や介護を通して親との残り時間が短いと気づかされたとき、親へのマイナスな感情とどのように折り合いをつければよいのか――? そんなことを考えさせられるトークショー&映画上映会が、5月22日に横浜・さくらワークスで開催された。

 登壇したのは、理解できない母親と向き合ってきた2人の女性。4月に『不仲の母を介護し看取って気づいた人生でいちばん大切なこと』(マキノ出版)を上梓したノンフィクションライター・川上澄江氏と、戦後、米国兵に嫁いだ日本人女性(戦争花嫁)を追ったドキュメンタリー映画『七転び八起き-アメリカへ渡った戦争花嫁物語』の共同監督を務めたルーシー・クラフト氏。2人に共通するのは、母に認められたいという渇求を、成人してからも長く捨てられなかったことだ。

 「40歳くらいまで、母親からの『よくやったね』という言葉を、無意識に求め続けていた」(ルーシー監督)、「いい年になっても、母親の小言が怖かった」(川上氏)と語る2人の母親は、どちらも敗戦直後の厳しい時期を経験した世代に当たる。

■キャリアを求めて渡米した戦争花嫁

 上映された短編映画『七転び八起き』は、戦後の日本に駐留した外国人兵と直接話す機会のあった通訳やタイプライターなどの職業に従事し、恋愛・結婚して渡米した、ルーシー監督の母親を含む3人の女性へのインタビューをドキュメンタリー。慣れない異国の地で戸惑いながら子育てをし、「白人社会の母親」として生きた女性の姿を通して、終戦直後の日本女性が置かれた境遇を浮かび上がらせる貴重な作品だ。

 当時、5万人に上るともいわれた「戦争花嫁」たち。年若い日本人女性が米国に渡った理由について、ルーシー監督は「終戦直後は苦しい時期であったと同時に、女性にとってはチャンスの時期でもあったといわれています。私の母親のように、まだ女性の進学率が低い時代に大学を卒業したような日本人女性は、女性解放が進むアメリカに自分のキャリアの可能性を感じて、夢を持って渡米する面もあった」と、その背景を解説する。

 しかし、夢を持って海を渡った彼女たちに期待されていたのは、実は日本と変わらない、「主婦」としての役割だった。同作には、絶望を抱えながら、文化の異なる異国の地で「母」になることを選んだ、戦争花嫁の孤独が描かれている。

 子どもに「I love you」と伝え、褒めることで子どもの能力を伸ばす周りの米国人家庭とは対照的に、ルーシー監督の母親は、娘の外見や能力に否定的で、ものさしで叩くなど日本式に厳しく育て、娘が頑張っても褒め言葉はかけなかった。周囲の家庭と比べて、子ども心に「なぜ母親は私を愛さないのだろう」「日本人とは何なのだろう」と、深いショックを受けたという。しかし映画を製作した今、そこには日米の教育の違いだけでなく、戦争花嫁という立場のストレスがあったと推測する。

 「戦争花嫁の多くは、友人や家族を置いて新しい土地に飛び込む冒険者みたいなタイプだから、一般的な“いい母親”になるとは限らないんですよね。けれども、日本もアメリカも、社会は『子どもの出来』で女性をジャッジする。女性は、成功している子どもを育てれば『価値のある人間だ』と判断されているのではないでしょうか。だから、彼女たちは育児で認められるしかなかった。助けもない中で、『子どもをしっかり育てなくては』というプレッシャーがあったから、より私たちに厳しく当たったんだと思う」と、ルーシー監督は母親もまた苦しんでいたことに理解を寄せる。

 「今は、母親にちゃんと愛されていたことはわかっている」と語りつつ、「それでも、絶対自分はお母さんのように子どもを育てないと決めていた」と続けるルーシー監督。母親とは異なる方針で子どもを育て上げ、最終的には母親から「私が間違っていた」と言われたエピソードも語った。

「母が母になった時代」を知ること=自分を知ること

しぃちゃん

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