「恋するように健康になって欲しい」練馬区の健恋7係プロジェクトはなぜ炎上した?

 「女子は、いくつになってもキレイでありたいと願うもの」なのでしょうか?

 東京都練馬区が「区民の皆さまに『恋』するように『健康』のことを思ってほしい、また、職員も『恋』するように熱い思いで伝えたい、という願い」を込めて、平成26年7月から始めた「健恋7係プロジェクト2015」に批判が殺到しています。冒頭のフレーズは、本プロジェクトで使用されているものです。

 「健恋7係プロジェクト」は、練馬区の健康推進課が、係を越えて実施する広報戦略。昨年も同様のキャッチコピーを掲げて活動していたようですが、プロジェクトの一環として、8月8日にフリーペーパーが創刊されたことで、注目を浴びたようです。

 すでに練馬区のサイトから削除されている本プロジェクトのチラシにはこのようなフレーズがあります。

「キレイ」は、素敵。
「健康」は、無敵。
自分を気遣える女子は、「できる女子」です。
健康7係は、すべての女子の「できる化」を応援します。

 「キレイ」「健康」でありたい女性は少なからずいるでしょう。もしかしたら多数派なのかもしれません。しかし、このような価値観を行政に掲げられたら、「キレイでない人」「健康でない人」はまるで「できない人」のように見えてしまう。突然のケガや病気を患い、健康でなくなってしまった人は「できない人」ということなのでしょうか? 身体の不調を自己管理の至らなさに押し込めてしまうことは、「自己責任論」や「自衛論」が大手をふるう空気を後押ししてしまいます。

 ただ、掲げられているフレーズだけで、内容はしっかりしている可能性もあります。

 8月8日に創刊されたフリーペーパーには、7月に実施された「『夏の温活女子講座』のダイジェストをメインに、その他女性に喜んでいただける内容」が書かれています。中面には、室内外の寒暖差が激しく自律神経のバランスに影響がでやすい夏は「冷え」対策が大切ということで、「冷えない女子の『温活』な1日」を描いています。

 ポイントは「食べること」「冷房対策」「お風呂の入り方」「質のいい睡眠」の4つ。健康に過ごすためのよくある方法で、突っ込みどころは見つかりません。

 あえて言えば、女性に限らず、「冷えにお悩みの方」に向けたアプローチをすれば良かったのでは? という点。あるいは行政であれば個人レベルの対策ではなく、「冷えやすい」環境をどう変えていくかを提言すべきだったのではないかという点でしょうか。個人レベルの対策は、それぞれが女性誌や健康美容業界の発信を参考にすれば良いわけで、行政が個人に押し付けることではないでしょう。「クールビス」はもちろん、「練馬区内は、冷房の設定温度を○○度に推奨します!」といった対策を掲げることも出来たはずです。

◎批判の対象は「練馬区」

 以前、批判の際には「主語」に気をつけたほうがいいと思う、といった旨の記事を書きましたが、健恋7係プロジェクトに対するSNSでの批判は、「練馬区」に対するものが多く、「これだからおっさんは」的な批判はあまり見かけませんでした。

 このプロジェクトが、男性によるアイディアなのか、女性によるアイディアなのか、その実態はわかりません。ステレオタイプな男性職員が、「女性はこうあるべきだろう」と考えてしまったのかもしれませんし、あるいは個人レベルで「キレイで健康でありたい」と考える女性職員が、本プロジェクトを推進したのかもしれません。

 練馬区は博報堂社員と、任期付きの職員として2013年4月から2年間の契約を結び、練馬区へのアピールを行っています「東京・練馬は『親しみをベースに』 元広告マン区職員に」。また、都政新報の「恋するようにドキドキ・ワクワク/健恋7係奮闘中!」によれば、

「練馬区の広聴広報課には、広告代理店出身の『ねりまプロモーション係長』がいる。我々は、ポスターやチラシなど様々な広報を行う際、係長にアドバイスをもらう。係長からGOサインが出れば、健康推進課長の決裁も太鼓判付きで一発OKとなる」

 ともあります。 ちなみに練馬区のチラシによれば、「健恋7係」のプロジェクトメンバーは全員女性です。

 犯人探しは望ましいことだと思いませんが、以上からわかることは、どの課が、どの性別が、どの年齢が、このプロジェクトを推進し、広報戦略を決めたのかはわからないということとです。ここで大切なのは「わからない」ということ、そして、いずれにせよ「練馬区がこのプロジェクトを行った」という点だと思います。

 フリーペーパーは冬に第二号を発行する予定だそうです。練馬区健康推進課のtwitterを見る限り、批判はちゃんと届いています。どのような内容になるのか、期待して待ちたいと思います。
(水谷ヨウ)

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