『なんかおもしろいマンガ』あります ~女子マンガ月報~【4月】

『地獄のガールフレンド』で“いま”の問題を描く、鳥飼茜の「視点」の強さ

女子マンガ研究家の小田真琴です。太洋社の「コミック発売予定一覧」によりますと、たとえば2015年3月には1048点ものマンガが刊行されています。その中から一般読者が「なんかおもしろいマンガ」を探し当てるのは至難のワザ。この記事があなたの「なんかおもしろいマンガ」探しの一助になれば幸いであります。後編では3~4月の新刊をご紹介します。

(前編はこちら)

【単行本】『おんなのいえ』、『先生の白い嘘』、そして『地獄のガールフレンド』が素晴らしすぎる鳥飼茜はいま真っ先に読むべきマンガ家!

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(左)『地獄のガールフレンド』1(祥伝社)『先生の白い嘘』3(講談社)

 「いま読むべきマンガ家は?」と問われたならば、先月ご紹介した『娘の家出』(集英社)の志村貴子先生と、そしてこの鳥飼茜先生とを真っ先に挙げることでしょう。作品のクオリティが高いのはもちろんのこと、そこには今の時代の空気が強く刻印されているからです。

 1981年大阪府生まれの鳥飼茜先生は、2004年に『放課後ミント』という作品で第27回BF新人まんが大賞の佳作を受賞してデビュー。主に別フレ系の雑誌で作品を発表し、2007年に初の単行本『わかってないのはわたしだけ』(講談社)を上梓し、翌年には初連載作品『ドラマチック』(講談社)を刊行しますが、その後、しばらくは雌伏の時を過ごすこととなります。

 転機となったのは10年から「モーニング・ツー」(講談社)で連載された『おはようおかえり』全5巻でした。京都の街を舞台に、いけずで美人の姉2人と優柔不断な弟、三者三様の恋模様を軽妙洒脱に描いたラブコメディは、暢気な導入部からはとても想像できないほどのうねりと広がりを見せ、奇跡のように美しいラストへと辿り着く大傑作です。その後の活躍はご存じのとおり。現在では3本の連載を抱える大人気作家となり、その3作品の新巻が3月から4月にかけて立て続けにリリースされました。

 鳥飼作品の魅力は、まず第一に言葉の強さにあります。「自分の人生が楽しいと人に言いづらいのはなんでだ」と、『地獄のガールフレンド』1(祥伝社)に登場するシングルマザーの加南はふと思います。結婚に疲れ果てて離婚し、子どもを育てながらイラストレーターとして働く彼女は、無理をして結婚生活を継続しようとしていた往時よりも、毎日が楽しくなったと痛感しています。しかし、それをなかなか素直には表明することができない。同居人のくそまじめなOL・悠里は、その原因をこう分析します。「お互い選んだ道が違いすぎるから、私たち女は誰も彼も大変てことにしてなきゃいられない。『自分だけ楽しい道を選んで』と反感を買ってしまわないように」。そして、「ホントはどんな道にだって楽しさや美しさがあることを知っているのに」とも、悠里は思うのでした。そこにあるのは女ゆえの多様なライフステージと、それに伴う同調圧力の問題です。

 ほかにも「私の子どもでもないのくせに私を『お母さん』と呼ぶな」問題や「男の子って怒らない女が好きなんだよね」問題など、日常に潜むささやかだけどややこしい女の諸問題を、鳥飼先生は次々と顕在化させていきます。ルームシェアをする3人の女たちのガールズトークで展開する本作は、鳥飼先生の長所がもっとも端的に表れた作品でありましょう。


 しかし問題を「ほら」と取り出してみたところで、何が解決するわけでもないのが鳥飼作品の特徴でもあります。萩尾望都先生も激賞した『先生の白い嘘』1~2(講談社)には、世にも不愉快な早藤という男が登場します。処女を好み、自己中心的で暴力的なこの男の全ての言動は、読む者にこれ以上ないほどの不快感を与えることでしょう。「男」という性が持つ暴力性が、この早藤というキャラクターには凝縮されています。物語はまだ途中ではありますが、おそらく安直なカタルシスが訪れることはないように思います。なぜならこれは早藤を罰すれば解決するという類の問題ではないからです。根の深い、私たちの社会に潜む、一朝一夕には解決しない、とても重大な問題であります。

 安酒のようなカタルシスは鳥飼作品には存在し得ません。いつだって、「いま=ここ」にある現実にノーガードの殴り合いを挑むのが鳥飼作品の真骨頂です。読者とともに考え、悩み、苦しんで、闘って、そして人生は続くのだと、その作品は訴えかけます。鳥飼作品にサービスがあるとすれば、それは俯瞰する視点、視座の提供です。理不尽や矛盾に対する唯一にして最上の抵抗手段は、知性によってのみなされ得うるものでありましょう。状況を俯瞰して眺め、分析し、把握し、じゃあどうすればいいのかと考え続けること。その作品世界を、私は鳥飼先生の姓から1文字を頂戴して「鳥瞰図」と呼んでいます。不確かで矛盾にあふれたこの世界で、その作品たちは、きっとあなたの生きる糧となってくれることでしょう。

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