[官能小説レビュー]

“親からの愛情の欠乏”が女を風俗への道に進ませる? 風俗嬢の自叙伝に見る叫び

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『風俗嬢菜摘ひかるの性的冒険』(光文社)

 AV女優をはじめとしたセックスを生業にする女性の中には、“愛情に飢えている”人がいるように感じる。例えば筆者の知人のAV出演経験者は、幼い頃から父親にDVを受けていて、男性に対する強い恐怖心とは裏腹に、「愛されたい」と強く感じるようになったのが、AV出演のきっかけだったという。AVで大勢の男に求められることで、欠落している父親からの愛情を埋めようとしているのかもしれない。

 AV女優や風俗嬢の自叙伝などを読んでいると、幼い頃にこのような深い傷を受けたことが共通している場合が多い。いつも小説を取り上げる当コーナーだが、今回は少し趣向を変えて、風俗嬢の自叙伝『風俗嬢菜摘ひかるの性的冒険』(光文社)紹介しようと思う。


 本書の著者・菜摘ひかるも、“愛情に飢えている”風俗嬢の1人だ。「不細工」と罵ってくる父親と、新興宗教にのめりこむ母親に育てられた菜摘は、幼い頃から家族と離れて暮らすことを望んでいた。

 そして高校2年生の頃、ついに親元を離れ、年上の女性と共同生活を開始。菜摘はこの同居人女性に強烈な愛情を抱き始め、彼女が大事にしている少女人形にすら嫉妬し始める。そして同時に、彼女の願望を全て受け入れ、高校生ながらもSMモデルをしたり、彼女の恋人に処女を捧げたり、3Pを経験することに。

 それから菜摘は、キャバクラ、ヘルス嬢、SM女王、ストリップ、イメクラ、ソープ嬢と、性を売る商売ならばどんなものでも足を踏み入れてゆく。その先々で繰り広げられる菜摘と男たちとのやりとりは、あまりにもはかなく滑稽だ。ストリップ小屋で淫部を触られ「濡れてるね」と下衆な笑いを浮かべる客に、菜摘は実はローションを仕込んでいることを思い返し、乾いた笑いを送る。性感マッサージ店にきていた、女装癖を持つ常連客に菜摘は衝撃を受けるも、店を一歩出るとその客のことをすっかり忘れてしまう。

 全ては男の性欲を満たすためだけの行為と、どこか冷めた目線を持ちながら、菜摘はいつも喜んで、彼らを快楽へ導くための道具となる一面を持っている。それはやはり、誰かに求められたいという願望からなのだろう。しかし「誰かに求められたい」「誰かに奉仕したい」という欲求を満たす、という点では、風俗以外の職業だって可能ではないか。実際、菜摘は高校を卒業して間もなくは、アパレル会社でショップ店員として働く傍ら、キャバクラ嬢として働いている。

 そんな菜摘がショップ店員を捨てて、風俗の道へと歩みだしたのは、どこか「体を売ることで傷つく」ことにより、「男に求められている」と実感する、自傷行為にも似た感覚があったのではないかと筆者は推測する。

 さらに、幼少時代、父親に「ブス」と罵られ続けて心に深い傷を作った菜摘は、ヘルスでの初めての客に「かわいいね、ありがとう」といわれたことがなによりうれしかったとし、風俗勤務への意志を自覚したと語る。体を売る痛みと、客からの温かい言葉……そのどちらもがあったからこそ、菜摘は風俗の世界に深く身を投じていったのではないだろうか。

 無数の男と体を交わした記録である本書。淡々とした語り口からは想像もできないような、愛を渇望する無言の叫びが聞こえてくるようだ。
(いしいのりえ)

神様にハマッてしまった母親も問題アリ……

しぃちゃん

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