ブルボンヌの映画批評 「女優女優女優!」第16回

アタシたちは他者に何を求めているかしら? 『ヘルタースケルター』は現実の世界よ!

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(c)2012映画『ヘルタースケルター』製作委員会

 サイ女な皆さーん、今日も「タレント名 整形」でググってますか~。変遷丸わかりどころか、勝手に施術内容まで解説された画像が出回る時代、バレずにやるなら小学校の卒アルからやっとけってことかしら。あーん、いくらなんでも成長期は危険すぎるわ!

 泣かせ演出の裏で絶対ウケ狙いも意識してるであろう改造ショー『B.C.ビューティー・コロシアム』(フジテレビ系)が定番化し、高須院長が西原理恵子先生とデュオのおもしろキャラになっていく中で、日本でも整形はすっかりカジュアル化した気がします。だいたい、プチなんとかって言い出すもんには「ハードル下げて手を出しやすくしてやろう」って意図がミエミエなわけでさ。ただし、プチンポだけはお断りだよ!(聞いてない)

 でも、プチっと手を出した先はどうなるんでしょ。マイケルも、ウィルデンシュタイン夫人も、扇風機おばさんも、日本のあの大御所歌手もあのアイドルも(保身)、外殻がどんどん変化していく中で、その心中では一体何が起こってたのかしら……。

 お待んたせいたしました。公開から1週間以上もたってようやく掲載の『ヘルター・スケルター』レビューでございます!

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ドーン! お呼びですか~。そうです、アタシが話題のエリカ様です。

 まずは、お会いしたこともない蜷川実花監督への、アタシの今までの勝手な印象。きっと、才能面では周囲に七光り呼ばわりされるのに苦しんだでしょうし、美を切り取る眼を持つ職種だけに、ご自身はさほどではないことも思い知っていたと思うの(でも大丈夫、オカマ好きするユーミン顔だお!)。そして、だからこそのルサンチマンが、この作品を世に出すのにもっとも必要な原動力だったはず。彼女の十八番でもあるトゥーマッチな極彩色世界は、作り込まれた表層美そのものだから。きっと、「映画」文脈だけで批評する一部の方は、後半の冗長さなどを指して監督の才能を否定すると思うけど、この作品に関しては、彼女の表現こそハマっていると断言したいわ。まさに、ピンチをチャンスに変えた女。そして改めて、時代を掴むハンパない才能に恐れ入ったわけ。

 だってこの原作って、16年前のコミックよ? それが今まさにドンピシャすぎるテーマとキャスティングで蘇ってんだから。岡崎京子先生の先見の明がありすぎたストーリーは、もしも発表当時にすぐ映像化されていたら、逆にピンとこないって過小評価されていたかもしれないもの。ネットメディアが加速し、美容技術も進歩し、芸能界と一般の境目が失われた今だからこそ引き立つ、この美しく恐ろしい物語。

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キャーッ! 壁一面に巨大な唇が! きっと、アンジーかと思ったら
清川虹子先生だったってオチよ……。

 突然ですが、アタシも、大森南朋たん演じる検事の言う「小さなタイガー・リリィ」なんですよね。
「りりィ」じゃないのよ。それは、『私は泣いています』。菜々緒ちゃんは、『主に泣いてます』(フジテレビ系)。

 世間様に関心を持っていただくために、アタシの戯言を聞いてもらうために、40歳のゲイのオッサンが女装してるんだからさ。りりこが全身の肉の形を装って注目を浴びたのと変わらない。メスを入れるかわりに、メスのふりをしたってだけだわ(うまく言ったつもり)。

 他者に見られるために作り上げた外殻が取り沙汰されるほどに、内面とのズレは摩擦熱を生むもの。エリカ様は事件以前から、自身を、世間に求められた「白エリカ」、自由に振舞う「黒エリカ」と称していたくらい。振り幅の大きいキャラだったからこそ、自分でもイヤッてほどその歪みの意味がわかってたんでしょうね。時代の大スターのヒステリックな裏側と、ついに起こる公の場でのマグマ大噴火。誰もが言う通り、完全にりりこ=エリカ様だった。チェ・ホンマンのフランケンとか、杏ちゃんのベラをはるかに上回る、正真正銘の「ハマり役」ってやつよ。

 役にハマりすぎて体調を崩したってゴシップはさすがに話題作りかなと勘ぐるものの、それが本当でも納得するくらいに、りりこの言葉はどれもこれもエリカ様のそれだったと思う。「別に」事件を経て、このタイミングで、この役柄で、乳を出し泣き叫んだ彼女は、蜷川実花監督同様、デキすぎなくらいに本能で時代を掴んでる。まさか、ここまで華々しくもエグい復活ができるなんて。……恐ろしい子!!

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ぎゃーっ!お口をあんぐり開けた絶叫は、まるでリアル楳図ビューティー。
楳図先生も「虚飾の大女優の裏側」ってテーマが大好きだもの。

 ストーリー自体は、岡崎先生の原作を限りなく忠実に映像化してあった分、ファンには納得の仕上がりじゃないかと。アタシも本当に、飽きることなく楽しめました。そして、ほぼ原作通りだからこそ、目立った変更点にも注目したい。

 まずは、「マ○コ舐めたくらいで調子に乗っちゃう」ジャーマネおばさん、寺島しのぶさん。原作と年齢設定が全然違う! 台所で若い彼氏にパンツずり下ろされた時には、思わず試写室で「誰得!」ってつぶやいちゃったわよ。まあ当のアタシがすごく得してるんですけど。この年増変更、アラサー~アラフォー女がいつまでも身の程を見極めきれず、「女子」なんて単語をいい年こいてあてがい続けるこのご時勢には、抜群のアイデアだったと思うわ。美と若さへの憧れと従属心が、魔法が解けた途端にしょっぱい復讐に変換されるところなんて、素晴らしくリアルにブスだったもの。

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エリカ様に負けじとショッキングな濡れ場を披露する寺島さん(って割と毎度のこと)。
見事なブス演技で、文句ナシの助演女優賞!

 そしてもう1つ。(※以降ネタバレ危険!)

 原作では、全身整形の過去が暴露されたりりこは、自ら片目をナイフで潰し、記者会見に現れないで消えてしまうの。でも今作では、きっちり会見をし、その最中に堂々と片目を潰した。これも、ジャーマネの年増化と同様に時代に則した見事な変更よね。この16年で、タレントたちはブログで日々のランチも晒し、Twitterで(時にはバカがばれる)私見を垂れ流すようになった。同時に一般人が同じツールを使って続々と人気者化し、「見る側と見られる側」の境界がどんどん曖昧になってきてるもの。世界中が玉石混合の「私を見て」信号の濁流に飲まれる中、伝説になるにはアレくらいしなくちゃ、ってこと。

 かくしてエリカ様、じゃなかった、りりこは、「私」を形作る片方の「他人の目」を潰し、純粋な黒りりことして異世界へ去ったのです。それが、他人の目の中で一番強烈に生き続ける方法だと気づいたから。

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芸能史に残る「別に」発言で、自ら白エリカを葬った彼女が、
劇中ではより過激な方法で、闇の蝶へと羽化。2丁目に飛んでおいで~!

 この作品、タイガー・リリィ気どりな女装オッサンのアタシにとっては、いくら語っても語りきれない。意地悪すぎる「テーマ・ソング」あゆの使い方、とか、逆に戸川純サマ「蛹化の女」の愛情あふれる使われ方、とか(個人的に、真のエンディングテーマは、「パンク蛹化の女」だと思ってるわ)。桃井かおりセンセに原田美枝子さんと、ベテラン女優陣の演じる冷酷な信念にもゾクゾクきたし。

 そして忘れちゃいけないのが、りりこにとって唯一、お互いのプロ意識を信頼し合えた友・キンちゃんがオネエだったって点ね。これについては、新宿2丁目ポータルサイト『2CHOPO』さんのアタシの連載内でも語らせていただいております。よろしかったらぜひ。

 サイ女には、タイガー・リリィよりも、プチ寺島しのぶのほうが多そうだけど、それも結局、表裏一体の存在。ぜひこの映画を見て、身につまされて欲しいわ。アタシたちがうらやむ「美」や「若さ」って一体なんなのかしらね? 今日もTwitterやfacebookで世界中に自分を見せて、アタシたちは何を確認したいのかしらね?

 16年前の予言通りに、もう世界は止めようもなく、しっちゃかめっちゃかなんだわ!

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ブルボンヌ
女装パフォーマー/ライター。『オレンジページ』(扶桑社)、『ケトル』(太田出版)、『au Karada Manager for Woman』『Gina』(ぶんか社)連載、『脳活アップデートQ!スマートモンキーズ!!』(フジテレビ系)準レギュラー出演中。新宿2丁目金曜夜のゲイミックスバー『Campy! BAR』のママ業も。
Twitter

『ヘルタースケルター』
トップモデルとして芸能界の頂点に君臨し、人々を魅了するりりこ。しかしその美は全身整形によって形作られてたものだった。誰にも言えないその秘密を抱えながら、人々の欲望と羨望の的となり芸能界を席巻していたが、やがてある事件を巻き起こす。

全国ロードショーで公開中
公式サイト

2CHOPOさんの記事、思わず泣けちゃったわ…

しぃちゃん

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