[官能小説レビュー]

いつまでも若く、キレイで従順……男性が描く「イイ女」の限界

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『不倫純愛』(新堂冬樹、新潮社)

 ちょっと前に車のCMで「私たち、主婦で、ママで、女です」なんてキャッチコピーがあった。「VERY」「STORY」(いずれも光文社)を愛読し、バッチリメークに、デカサングラスかけた巻き髪、白のクロップドパンツにハイヒールで、片手にコーチのバッグ、もう片手に子どもをぶら下げているオサレ妻。ひと昔前は「いねーよ!」って思っていたけど、ふと子連れママを見かけると、きちんとオンナしてる奥さまが意外と多い。

 年の割に若くて美人、ファッションもキチンとしていて、スタイル維持も怠らない。そんな「イケてる妻」人口がじわじわと増えてきている。その完璧さはどこまで徹底されているのかなんて同性には簡単に見透かすことができるけれど、男性は意外と見破れないのかもしれない。

 今回紹介する『不倫純愛』、主人公・京介の妻・真知子は、完璧な妻を絵に描いたような女性。結婚生活15年を超えた今でもキチンと女を磨いている。スタイル抜群、しかも料理上手で妻としては百点満点だけれど、セックスだけはうまくいかない。男性としての務めが果たせなかった夫に「昔はこんなことなかったのに」なんて、男のプライドをさらに傷つけるような追い打ちをかける一言を発してしまう。

 出版社勤務の京介は、担当する人気作家・岡セイジの美人秘書・澪香に誘われ、一夜を共にしてしまう。若くて美しい澪香の魅力に溺れた京介は、獣と化したかのように貪るようなセックスを繰り広げる。

 洋服や下着に付いた精液やファンデーションの跡、携帯電話が着信しないことなどから、京介が浮気をしていることに気付く真知子。そんな中、ひょんなことから澪香の恋人であるセイジと出会う。彼の職場で京介と澪香がセックスをしていたと聞き、見たことのない澪香と彼女を抱く京介のことを想像しながら、嫉妬と憎悪をかき消すようにシャワールームでひとりエッチをする真知子。これほど女として悲しいシチュエーションがあるだろうか?

 ある日、セイジは職場に盗撮カメラを設置し、京介と澪香が抱き合う姿を真知子に見せる。モニター越しの夫は、若くて美しい愛人を獣のように貪り、汚い言葉で罵りながらも激しく渇望していた。普段決して自分には見せない夫の素顔を見せつけられた真知子は、流されるままにセイジを受け入れてしまう。

 些細な言い争いの末にぽろっと浮気を白状し、平謝りをする京介。そして真知子は、夫の謝罪を受け入れる。だって、夫婦じゃない。ちゃんちゃん♪……んなワケあるかい!

 これ、新堂冬樹さんが描く「イイ女」の限界だなあと思う。女ってもっと自分勝手で、裏切りはそう簡単に許せない。ましてや真知子は、身なりを褒められること以上に、オンナとしての自分を褒めてもらいたかったのだから。澪香を抱いたように求められるような関係はとうに過ぎているとはわかっている、オモチャ使ってブイブイいたぶるような激しいセックスを望んでいたんじゃない。ただ普通にくちづけをして抱き合って、たっぷり濡れたアソコを欲して屹立した夫を受け入れたかっただけなのだ。そんな自分を全否定した京介をあっさり許せるわけがない。たとえ自分も一度浮気をしていようと、そんなことは関係ないわと棚の上にひょいっと上げて、さも100%被害者のような顔ができる生き物ですよね、オンナって。

 外見がキレイなオサレ妻は心もキレイ、なんてオトコ主観の方程式は、生身のオンナには通用しない。一見完璧に見える女性ほど、内側にはドロッとしたものを抱えていて、針でプスッと刺すだけで不純物があふれ出るほどもろい。弱さやズルさを抱えているからの武装で、そんなナマっぽい部分を抱えているからこそ魅力的なのにね。オトコにとってオンナは永遠の女神であり、オトコは永遠の少年。イイ年こいてもオンナに夢見ていたいのかもね。

『不倫純愛 』

オサレ妻、が~んば!!

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