[官能小説レビュー]

「子どものために」という枕詞を利用しまくる、『ママなのに』

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『ママなのに』(無双舎)

 「SM」「調教」「時代モノ」などがあるなか、官能小説界の中でもっともハイブランドなカテゴリのひとつが”人妻”。いや、これってもしかしたら官能小説界だけじゃなくて、男性全般にも言えるのかも。ママってモテるらしいし。独身時代はサエない恋愛事情を送っていた友達が、結婚、出産していくうちに、モテ率がぐんぐん上向きになったらしい。結婚して、手に入らない女性になったところでワンステップ。出産して、子どもという守るべきものを持つ女性になって、さらにワンステップ。独身女とはフィールドが違う気がする。

 セックスに対しての考え方も、ママと独身とでは雲泥の差がある。ママは達観しているんだよね。結婚前の女って「ヤラせてあげるわよ」的な、上から目線でセックスにいたることが多い気がするけれど、ママは自分の裸にごくまっとうな値段を付けている気がする。互いの利害関係が一致すればオッケイよ、みたいな。

 今回紹介する『ママなのに』に登場するママたちは、我が子を私立保育園に入れたいがために、保育士や園長先生とセックスしてしまう。まったく! ママなのに。

 たとえば、書店に勤める裕恵さん。

机の上に置かれた指先は白くつやつやと輝いており、本を縛ったり解いたりの作業をしているようにはとても見えない。

 と、園長先生が見抜いたとおり、裕恵さんは遊ぶ時間欲しさに保育園に入れたいと思っていたらしく、園長先生が抜き打ちで家庭訪問に行ってみると、ママ友と楽しくお茶してる裕恵さん。バレちゃったモンは仕方ないと開き直って、園長先生のズボンのチャックを下ろす始末。

「入れてもらえるんなら、何だってします」

 おいおい誰もそこまでしろなんて言ってねーよ。みたいな展開だけれど官能小説ならそれもアリ。ていうか、むしろソレがないと。あ、ちなみにこの場合の「入れてもらえるんなら」は、残念ながら幼稚園の話ですので、お間違えなく! 24歳の裕恵さん、なかなか思い切りの良い舐めっぷりをするそう。「顎が疲れるからイヤー」とか言ってフェラを拒否している女子に比べると数段リードしている感がありますね。さすがママ。園長先生も、結局お口でイッちゃうわけですが、ピンクワイロじゃ動じないよと裕恵さんを諭します。すると裕恵さん、

「やっぱり……セックスもしないと、ダメ、ですか?」

 だから、言ってねえよ! ここまで来ると、入園うんぬんの前にあんたがヤリたいんじゃん! けれど据え膳食わぬは男の恥だよな園長先生。後日、裕恵さんに呼び出され、ヤッてしまいます。

「まだ二十四だし、自分の人生の途中なんだもの。専門学校に行って英語の勉強もしてみたいし、ゆっくりデパートでお買い物だってしたいの。ワガママかもしれないけど、でも、自由になりたいの」

 結婚して安定した生活を得て、子どももいて、自由も欲しくてチンポも欲しいなんて、おまえどんだけ強欲なんだと小突きたくなる台詞。が、これっておおっぴらには絶対言えないけれど、実は女の本音なはず。

 スリップドレスで出迎え、上下お揃いの下着を自ら脱いで園長先生を誘う裕恵さん。ここまで来るともはや本来の目的を忘れてしまいます。これからお世話になるかもしれない保育園の園長先生に、素っ裸で誘いをかけるなんて! あんたやっぱりヤリたかっただけだろ!

 実際、前から後ろから斜めから突かれまくって感じまくり、アンアンヤンヤン喘ぎまくってしまう裕恵さん。余談ですが、セックスしている場所は裕恵さん宅です。しかも身内に子どもを預けるという計画的犯行。一般的に、おうちセックスは冷めるものだと言いますが、それは旦那相手の話。旦那以外の男性となら、がぜん燃えます。「夫にバレないかしら、あたしったら自宅へ男を連れ込んでこんなイケナイことして……」あらゆる不安材料がМッ気を奮い立たせてしまう。こんなにそそるシチュエーションで、しかもタダ。合理的です。股はゆるくても財布の紐はゆるめない。主婦の鑑。とはいえ豪快にあえぎまくる奔放さはどうなんでしょう。私、近隣のみなさま宅に声が漏れ聞こえないか不安になってしまいます。まったく大きなお世話ですが。

 結局裕恵さんは、念願の入園権を得て、しかもセフレとしての園長先生もゲットしてしまいました。欲しいものを、身ひとつですべて手に入れてしまうパワフルなママ。その原動力の源は、やっぱりかわいい我が子なのかもしれません。子どもときちんと向き合いたいから、自由な時間が欲しい。そのためには喜んでひと肌脱ぐし、ストレス解消セックスだってしちゃう。すべては、かわいい我が子のため。もったいないからヤラせてあげない、なんてのたまう独身女よりも明らかに強い。ママ、恐るべし。

『ママなのに』

子どもを産むと、欲望に忠実になるってことですね

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