[官能小説レビュー]

少女マンガ風の展開とねっちりした性描写で女性にも読みやすい『恋人』

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『恋人』(松崎詩織、幻冬舎)

 草食系という言葉がすっかり定着した昨今、その実害がついに官能小説業界にも表れつつある。官能小説の新刊、減ってきてるらしい。やっぱり官能小説って男性のアソコを上向きにさせるツールだもの、草食草食言われてる今の時代、右肩下がりになるのは仕方ない。とはいえ、なんともつまらない時代になったモンだ。男子たるもの、いつの時代もオンナを追っ掛けるくらいの元気がなきゃ。

 先日なじみの編集さんとの打ち合わせのときにそんな話をしていたら、でもね、と前置きをしてから「逆に、女性の読者が増えているんです。しかも、すごい勢いで」と、こっそり打ち明けてくれた。官能小説をむさぼる肉食女子。なんとも頼もしいじゃありませんか! 確かにここ最近、官能小説界には女流作家さんが増え、こうして女子のみなさまにご紹介できる官能小説も増えてきて、女性でも読みやすいソフトな内容のものも多い。

 今回ご紹介する「恋人」の著者・松崎詩織さんも、もちろん女性。いかにも女流作家さんらしいキラキラした少女マンガ風の展開をベースにしつつも、性描写は濃厚に書いてくれている。

 物語に登場するのは、主人公の神崎太一と、その同僚の美奈。四十代の男性と二十代の女性の純愛モノである。ふとした偶然から一緒に飲みに行くことになった二人は、酔ったハズミでエッチ寸前の仲になり、お互いを意識するようになる。けれど、神崎には妻子がいて、美奈には婚約者同然の恋人がいる。いけないと分かっていながら惹かれあう二人。何度もストッパーをかけながらも、ついには最後の一線を越えてしまう。

 と、ここまで書くと「コレってホントに官能小説?」と首を傾げたくなりそうなあらすじ。遊び上手で強引で、女に強気なバブリー神崎に対して、バブルにはカスりもしないけれど、明るくて泣き虫で真っすぐで、彼女が笑えばパッと花が咲き誇りそうな、昭和の少女マンガのヒロインみたいな美奈。銀座のショーレストランで飲んだ後、タクシーで埼玉まで送ってあげたりと金の掛かるデートをしたあとは、金の掛からない公園で寸止めプレイをしたりと、バブリーなんだかそうじゃないんだか……。でも、寸止めデートを重ねた後で、晴れて一線を越える美奈の誕生日の舞台をフォーシーズンズホテルに決め、イタリア料理の店で乾杯した後で花束をプレゼントし、夜には淫らに抱き合うっていう、やっぱりバブル臭ムンムンな不倫カップル。このテのお姫さま的シチュエーションって、いつになっても女性のあこがれなの?

 この手の「読み物」としても十分楽しめる、他ジャンルとのボーダーレス官能小説って、ともすればセックスがツカミになりがちだけれど、この小説はきちんと目的になっているところが素晴らしい。恋人とのはざまで揺れる美奈を想う神崎と、あふれる気持ちを制御できなくなって、ようやく結ばれたときのセックス描写は愛情にあふれていてかわいいし、きちんとエロい。電話ボックスの中で、昔読んだ小説のエロいシーンをなぞって後ろから攻められる場面なんて、女性ならではのジリジリとした高揚感が描かれてて、ぞくぞくする。

 トレンディーに言うと、夏の花火のように、熱く燃え上がって一瞬で消えてしまった二人の恋。身を引き裂かれそうな想いをしながら別れを告げると、時代はいきなり25年後へ。その後はバタバタとエンディング。「読者の想像にお任せします」にしては、あまりにも情報不足すぎて、ちょっとお粗末。

 いい意味でライトな官能小説。女性のための官能小説・初心者編にはぴったりの一冊。表紙の今井有美さんのイラストもきれいだし、エッチな単語や台詞も控えめだから、満員電車の中でチラ見されてもオッケーです。

『恋人』

バブル男に弱い人はハマりそうなストーリーでした

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