私は元闇金おばさん

「強盗でもなんでもやって金を作る」倒産寸前の社長が、ついに一線を越えた! 闇金社員が見た衝撃の結末

2022/12/03 16:00
るり子(ライター)

血の気を失くした顔の社長から金を吸い上げ闇金の現実

 血の気を失くした顔で、床に正座したまま懇願する北西社長を見下ろす部長の目は冷たく、まるで助ける気配は感じられません。社員全員が出社したところで、応接室から出てきた部長は、北西印刷の 債権譲渡や不動産登記の準備をするよう指示した後、回収要員である藤原さんを連れて北西社長と一緒に出かけていきました。出がけに、債権の保全が取れ次第、依頼返却をかけるからと予告されます。

「伊東部長、依頼返却は午後2時までだからね。銀行がうるさいから、時間厳守でお願いしますよ」

 先輩事務員の愛子さんが声をかけると、部長は、

「ああ、早めに連絡するから」

と約束していました。

 愛子さんによれば、依頼返却は銀行が嫌がる手続きらしく、基本的にはお断りしているそうです。そのため、やむなくお願いする場合には、顧客から「ジャンプ手数料」として一律10万円を徴収していました。言ってしまえば、不渡回避につけ込んだ脅迫みたいなもので、当座決済を条件とする意味深さを思い知ります。口では助けてやると言いながら、必死に作ってきたであろう手元資金を吸い上げ、その裏で回収準備に入る。そんな現実があるのです。

 結局、午後一番で連絡が入り、北西社長の奥さんを連帯保証人に取り込むことで、依頼返却をかけることになりました。銀行で手続きするため、印鑑を借りるべく社長室に入ると、すでに部長から報告を受けていた社長が言います。

「もう時間の問題だから、ここで飛ばして、回収に入っちゃってもいいんだけどな。女房の保証をもらったって、状況は変わらんだろう」
「他業者の利用もたくさんある方だから、また大変なことになるんじゃないですか?」
「不渡情報が世間に出回るのは、早くとも2日後だから、その間に全部取れるよ。倒産情報を一番に知ることで、客を抱き込むこともできるから、不渡の直撃は有利なことなんだ」
「確かに。巻き込まれる奥さんが、かわいそうですね」

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