『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』暴力を振るい介護施設から出禁に……「ありのままでいいじゃない ~いしいさん家の人々~後編」 

2022/08/08 18:44
石徹白未亜(ライター)

『ザ・ノンフィクション』ケアされたいヤマピーへの逆転の提案

 一方、出禁が解かれ、いしいさん家に戻ったヤマピーは、顔にモザイクがかかっていても「ウキウキしている」のが伝わる声色だった。しかし、ケアされる側でなく、「ケアする側に回る」というまさかの条件に、当初は文字通り頭を抱えていた。

番組の最後では介助の手伝いをしようとする様子が映っていたが、ヤマピーは『ザ・ノンフィクション』の前後編だけでも十二分にやらかしており、素直に「めでたしめでたし」とはいかなそうな感じもする。

 ただ、この「ケアされる側だと思っていた人をケアする側に回す」という逆転の発想には、希望を感じた。ヤマピーを見て、「私はかわいそうな被害者で、だから周囲は自分をケアしてほしい。自分の話を聞いてほしい」という自己憐憫(じこれんびん)の感情を四六時中抱えているのは、非常に生きづらそうだと思ったし、終わりがないようにも思った。

 終わりなき自己憐憫から目をそらさせる、という意味でも、ケアされる人をケアする人にする、ということへの可能性に期待する。その後の、いしいさん家も見たい。

石徹白未亜(ライター)

石徹白未亜(ライター)

専門分野はネット依存、同人文化(二次創作)。ネット依存を防ぐための啓発講演も行う。著書に『節ネット、はじめました。』(CCCメディアハウス)など。

記事一覧

Twitter:@zPvDKtu9XhnyIvl

いとしろ堂

最終更新:2022/08/08 18:44
振り回されてナンボ
信念に共鳴したスタッフでも離れてく事実、どうする?
アクセスランキング