コラム
老いゆく親と、どう向き合う?

一人暮らしをする母から「今日も1日、誰ともしゃべらなかった」報告がつらい――息子が抱える後ろめたさ

2022/08/14 18:00
坂口鈴香(ライター)

「絵手紙は一方通行の自己満足で済みますが、電話は母と会話するので、絵手紙とは違うんですよ。毎日『元気?』『はい』なら、小学校の出席確認と変わらない。母からワン切りしてもらっても済む話です。でも毎日会話しようとすると、話題に困ってしまって……。次第に電話をするのが1日おき、2日おきになって、今では週に2回になりました」

 同じ屋根の下で暮らしているのなら、互いに無言でテレビでも見ていれば済むのだろうが、電話だと沈黙がつらい。松野さんに共感する人は多いのではないだろうか。母と娘なら、まだ話が弾むのかもしれない。電話する前に、その日の話題になりそうな内容を考えてから臨んでいる。「相撲をやっている時期は助かります」と笑う。

 つらいのはそれだけではない、と松野さんは表情を曇らせた。

「最近、電話するたびに母が『今日も1日、誰ともしゃべらなかった』とこぼすんです。確かに、1日中誰とも会話せずに過ごすのはどんなにかさびしいだろうとは思います。ただそれを毎日聞かされると、こっちもきつい。だんだん、母が自分を悲劇の主人公にしているんじゃないかと思うようになってきました」

――続きは8月28日公開

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坂口鈴香(ライター)

終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終末ライター”。訪問した施設は100か所以上。 20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、 人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

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最終更新:2022/08/14 18:00
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