コラム
仁科友里の「女のための有名人深読み週報」

『上田と女が吠える夜』今もなお「結婚で女の友情が崩れる」エピソードが出てくるワケ

2022/06/30 21:00
仁科友里(ライター)

 前述のように、自分の人生がうまくいっていないタイミングで、友達が結婚して落差を感じた場合、「気分で生きる人」は「今の気分」を重んじるので、ショックを隠せない。一方の「気持ちで生きる人」は、「その友達と仲良くしたい」という自分の気持ち、また相手の気持ちも重んじるので、そこはぐっとがまんして祝福する。

 要するに、「気分で生きる人」が友達の結婚にショックを隠せないこと、また「気持ちで生きる人」がその態度を理解できないことで、結果的に、友人関係が壊れてしまうのではないだろうか。

 加えて、「気分で生きる人」は「今の気分」を優先するので、友達を失ったこともそれほど気にしない一方、「気持ちで生きる人」は「あんなに仲が良かったのに、なぜ」「自分が悪かったのではないか」「友情とはなんだろう」と考え込み、自分を責める傾向があると思う。そうすると、一度壊れた友人関係の修復は困難になってしまうだろう。

 吉住は『上田と女が吠える夜』で、「『うちら』っていう団体意識の強い人」に関して、「25歳とか超えて~」と年齢に言及していた。「気分で生きる人」も「気持ちで生きる人」も、学生時代は概ね、同じような進学ルートを辿る。しかし、社会に出ると、生き方は千差万別である。新卒として入社した会社にずっといる人もいれば、転職する人もいる。結婚する人もいれば、しない人もいる。結婚したいのになかなかうまくいかない人もいれば、結婚願望がそれほどあったわけでもないのに結婚した人もいるだろう。

 社会に出た25歳以降は、「どんな人生を歩むか」を自分で決めなくてはいけない時期に差し掛かり、思い通りにいかないことが増えてくると、本来の気質の違いが際立ってくるのではないか。

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