芸能
[連載]崔盛旭の『映画で学ぶ、韓国近現代史』

Netflix『未成年裁判』は“ほぼ実話”? モチーフになった事件と、ドラマで描かれなかった「犯行動機」のうわさ

2022/04/22 19:00
崔盛旭(チェ・ソンウク)

 今回紹介した事件から、日本では1997年に14歳の少年が起こした「神戸連続児童殺傷事件」を思い起こす人も多いかもしれない。普通の中学生による猟奇的な犯罪として日本中を震撼させたこの事件によって、日本でも少年法の限界や、加害少年の情報が漏えいし報道が過熱するなど、さまざまな問題や議論が巻き起こった。

 そして今年4月、成人年齢の引き下げに伴い、18~19歳の少年犯罪に対する厳罰化や実名報道の解禁といった少年法の改正が行われた。実際に、19歳の少年が起訴された「甲府夫婦殺人放火事件」をめぐっては、今回の法改正を受けて、各メディアで実名報道が行われている。まさに今、日本でも未成年犯罪に再び注目が集まっているといえるだろう。

 一方の韓国では、未成年犯罪に関してメディアが大々的に報道したり、憤った市民たちが厳罰化を求めて声を上げることはあっても、18歳未満の未成年犯罪をめぐる顔や実名の公開は、現在も禁止されている。

 だが、時代も社会も、そして子どもたちを取り巻く環境も大きく変化する中で、今後、日本のような改正が行われる可能性は十分考えられる。ドラマにも登場した「推定無罪」の重みや、名前や顔が出ることで発揮される犯罪の抑止力といったさまざまな要素を鑑みる必要があるだろう。

 未成年による犯罪が絶えない社会の現実にどう向き合い、いかなる判断を下すのか。加害者の裁判においては感情に揺れることなく常に冷徹でありながら、被害者の悲しみには共感し寄り添おうとする、キム・ヘス演じる「シム・ウンソク判事」の目を通して、ぜひ最後までドラマを見守ってほしい。 

崔盛旭(チェ・ソンウク)
1969年韓国生まれ。映画研究者。明治学院大学大学院で芸術学(映画専攻)博士号取得。著書に『今井正 戦時と戦後のあいだ』(クレイン)、共著に『韓国映画で学ぶ韓国社会と歴史』(キネマ旬報社)、『日本映画は生きている 第4巻 スクリーンのなかの他者』(岩波書店)など。韓国映画の魅力を、文化や社会的背景を交えながら伝える仕事に取り組んでいる。

最終更新:2022/04/22 19:00
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