コラム
[再掲]仁科友里「女のための有名人深読み週報」

マツコ・デラックスの引退説に考える、テレビ視聴者に“毒舌”が通用しなくなった現況

2022/01/27 21:00
仁科友里(ライター)

 10月9日放送の『マツコ&有吉のかりそめ天国』(テレビ朝日系)で、マツコと有吉弘行が、フリーアナウンサー・田中みな実とテレビ朝日アナウンサー・弘中綾香について話していた。

 南海キャンディーズ・山里亮太、田中、弘中両アナがMCを務める新番組『あざとくて何が悪いの?』(同)が同10日から始まり、第1回のゲストが有吉だった。収録時、弘中アナが「1回目のゲストが有吉さん、怖い」と怯えていたので、有吉は「そんなこと言わないでよ」と言いつつ、「『かりそめ天国』のオフのとき、お前の悪口言ってるけどな」と付け加えた。有吉はそのときのことを振り返り、「自分の名前だけで言えばよかったんだけど、マツコさんの名前も出しちゃった」と、自分だけでなく、マツコも弘中アナの悪口を言っているかのように話してしまったと謝罪していた。

 私は、マツコや有吉と同世代だが、我々が若い頃のテレビでは、番組の企画で、タレントが大物や旬の芸能人のことを「嫌い」と言うことは結構あった。特に毒舌をウリにする芸人やタレントは、視聴者の興味を引く人物について、カメラの前で悪く言うのが「お仕事」なわけだし(無名のタレントの名前を挙げても、面白さがない)、そもそも、カメラの前でそういう話をしている時点で、本当に嫌いということはないだろう。

 しかし、それは世慣れた中年の論理で、今のテレビで同じことをすると、現代の若者は傷つきやすいのか、「有吉やマツコが女子アナをいじめている」「パワハラだ!」と解釈することもあるのではないだろうか。それがSNSで拡散されると、番組を見ていない人もノリで加担して、炎上しないとも限らない。

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