『ザ・ノンフィクション』レビュー,

『ザ・ノンフィクション』日本を出て中国・深圳で生きる原動力「この町で人生を変えたくて ~結婚とお金と生きがいと~」

2021/12/20 18:18
石徹白未亜(ライター)

『ザ・ノンフィクション』日本をくさして、バネにする

 ゆきと鈴木は「日本社会がどうにも合わず、世界中を旅し深圳にたどり着く」という経緯が似ている。特に鈴木は「日本って『お金持ちになりたい』というと汚いと思われるじゃないですか」「資本主義の犬め、みたいな」と話していた。しかし、実際に鈴木に口頭でここまで言った人は本当にいたのだろうか。鈴木の話を聞いていた番組スタッフも「そうかなぁ」と同意しかねていた。

 実際のところは、なんとなく雰囲気でそう感じたとか、ネットの書き込みを見た、あたりなのではないだろうか。ネットは大げさなものほど目を引く世界なので、リアルとは異なる。もし実際に日本で、鈴木の夢に対し対面でこのように言う人がいたのだとしたら、それは日本社会が悪いというより、話す相手のチョイスを間違えたようにも思う。

 一方で、「過去を(実態よりも)くさして、それをこれからの生きるためのバネにする」という感覚は、鈴木ほどではないものの、私も上京してきた立場なのでわかるところもある。国や地域でなくとも「自分を振った相手、うまくいかなかった勤め先を悪者にして奮起する」「あいつを見返してやる」などまで含めれば、心当たりのある人も少なくない感覚に思える。

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