カルチャー
伊東美和氏インタビュー

『君と世界が終わる日に』は、『ウォーキング・デッド』の劣化コピーに? ゾンビ映画ウォッチャーが「しょぼい理由」を考察

2021/01/31 16:00
サイゾーウーマン編集部

 地上波ゴールデン・プライム帯初のゾンビドラマながら、容赦なく厳しい意見が飛び交う『キミセカ』だが、伊東氏は、いまゾンビモノを作る難しさを指摘する。

「響がトンネルから脱出したところ、街にゾンビがはびこっているという展開は、主人公が昏睡状態から目覚めたら、世界がひどい状況になっているという設定の『ウォーキング・デッド』や『28日後…』に似ています。また、ゾンビが救急車を囲んだり、壁越しにゾンビの手がわーっと出てくるシーンなどは、もうほかの作品で何度も見てますよね。こうしたネタが出尽くした状況で、どんな新しさを加えるかというのは、なかなか難しいと思います」

 ゾンビモノは、下火だった90年代を経て、2000年代に映画『バイオハザード』のヒットで盛り上がりを見せ、10年代には、王道といえる『ウォーキング・デッド』のブレークにより、一大ブームとなった。その過程においても、ゾンビモノの“新しい要素”が着目されてきたという。

「2000年代には『走るゾンビ』が注目を浴び、“アクション映画的な要素のある新しいゾンビモノ”として人気を集めました。近年、割と多いのは、ゾンビが恋愛したり、周囲から差別されて心を痛めるなど、『ゾンビにも感情や意識がある』という新しさを取り入れた作品です。そんな状況に加え、『ウォーキング・デッド』という究極のゾンビドラマを、あれだけのスケールで作られた後とあって、その劣化コピーみたいな作品を作ってもどうしようもない。せっかく日本の地上波ドラマでやるんですから、『キミセカ』も、何か一つでも新しい要素を入れられるといいのではないでしょうか」

 ゾンビの設定に新しさを加えるだけでなく、例えば『新感染』では、アクションシーンの演出に工夫が凝らされていたという伊東氏。電車内や駅のホームなど、常に“直線”でゾンビに追いかけられるという演出が、“スリル”を生んだと指摘する。

「一方で、オーソドックスな設定でも、生存者側の対ゾンビ作戦の描き方を凝るのも手です。優れたゾンビモノって、例えば『ゾンビを一カ所に集めて、別の方向から逃げる』とか『ショッピングモールの入り口にトラックをたくさん並べて、ゾンビの侵入を阻止する』とか、対ゾンビ作戦をリアルに描くという特徴がある。そこを凝ることが、面白さにつながるんです」

 現在放送中の『キミセカ』は「Season1」で、3月からはHuluで「Season2」が配信予定とのこと。今後の展開次第で、いまいちな視聴者評が覆り、のちに語り継がれるゾンビドラマになれるのか……展開を見守りたい。

伊東美和(いとう・よしかず)
ゾンビ映画ウォッチャー。著書に『ゾンビ映画大事典』、共著書に『ゾンビ論』(共に洋泉社)などがある。

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最終更新:2021/01/31 16:00
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