コラム
仁科友里「女のための有名人深読み週報」

YouTuber・フワちゃん、坂上忍を「あんた」呼び! 「タメ口強気キャラ」が芸能界で通用しないと思うワケ

2020/09/03 21:00
仁科友里(ライター)

 90年代に『LOVE LOVE 愛してる』(フジテレビ系)という音楽バラエティ番組にレギュラー出演していた篠原は、「篠原ともえのプリプリプリティー!!」というコーナーを担当していた。これは、篠原がタレントの楽屋を訪れ、体をくねくねさせながら、「何かください」と物をねだって視聴者にプレゼントするコーナーだったが、目上の有名芸能人であろうと、がんがん距離を詰めていく篠原を「無礼」だとして、男性芸能人の中には、ぶったり飛び蹴りを食らわせたりする人が、実際にいた。もちろん力加減は調節していただろうが、それでもあきらめずに詰め寄る篠原が、もう一度蹴られたり、水をかけられたりすることもあった。今なら炎上必至のコーナーだろう。

 ただ、当時の篠原は目上の芸能人の楽屋に物怖じせずに押し入り、「何かください」とお願いするものの、相手の芸能人を立てていたように私には感じられた。しかし、フワちゃんは常に強気なのである。芸能界は年功序列の世界のようだが、8月28日放送の『ダウンタウンなう』(同)に出演したフワちゃんは、ダウンタウンの二人を「松ちゃん」「浜ちゃん」、坂上忍をそのままフルネーム呼び捨てにしている。このほかにも、ビートたけしを「たけし」、タモリを「タモリ」と呼び捨てにしている。そんなフワちゃんの言動をダウンタウンら三人は笑っているが、これが「今の時代」なのだと思う。

 かつて、坂上忍はMCを務める『バイキング』(同)で、タメ口をきくタレントに「冗談じゃねえぞ」と不快感をあらわにしていたことがあるが、最近は「週刊女性」(主婦と生活社)にも「坂上忍のパワハラで『バイキング』が9月終了か」と報じられるなど、「パワハラをしていそうな人」というイメージを持たれつつある。同番組で進行を務める榎並大二郎アナがミスをしたとき、坂上の当たりが強いのもあり、そう見る人がいても仕方ないだろう。しかし坂上がフワちゃんに呼び捨てされたとき「冗談じゃねえぞ」と言ってしまうと、パワハラのイメージはますます強まるはず。だから、こういうときは本心は別として「オジサンまいったなぁ」といった感じで、笑っておくのが得策と言えるのではないだろうか。事実、坂上はフワちゃんに呼び捨てにされ、タメ口をきかれても、笑っているか、時折ポカンとはするもののあからさまに怒っておらず、ハラスメント意識が高くなった「今時」の対応だと感じた。

 また坂上は「フワちゃんてさ、恋とかすんの?」と質問し、フワちゃんは「は? あんたのこの関係性で教えてあげるわけないじゃん」と返して笑いを誘ったが、これも「今時」だと思う。昔も「プライベートのことを話したくない」という女性タレントはいたが、そんなことを言おうものなら、司会者に「なら、何しに来てるんだギャラ泥棒」と返されたし、同じ考えを持つ視聴者もいただろう。しかし、今はパワハラやセクハラはいけないという考えが広がっているので、職場でも「彼氏いるの?」といったプライベートな質問をする年長者は「おかしい」と言っていい時代だ。坂上も、フワちゃんに興味があるわけではなく、仕事だから聞いたまでだろうが、プライベートに踏み込んでくる年長者に悩まされている若い人は、フワちゃんの返しに「よく言った」と爽快感を感じたのではないだろうか。

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