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ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』東大相撲部員の青春「東大生の僕が手に入れたもの~「東京大学相撲部」悩める青春~

2020/08/11 12:37
石徹白未亜(ライター)

 苦悩する益田の一方、同学年で「陽キャ」でもある須山は大人っぽい。慶應に入るも諦めきれず東大を受験しなおした須山は、その際に苦悩し乗り越えたものがあったのだろう。元主将の野口は、暴力的だった父親への憎しみが努力の原動力になっていると話し、苦悩とそれを乗り越えた過去が垣間見える。苦悩に押し潰される人もいるため、苦悩がいいことばかりとは言えないが、須山や野口の芯の強さは苦悩と必死で向き合い、乗り越えていった経験の賜物にも思える。

 一方で、その2人と異なる芯の強さを感じさせるのが古代史大好き・小山だ。“バーチャル平城京”を作る小山の古代史への情熱は、さかなクンの魚類への情熱に近いものを感じる。小山はその古代史愛ゆえに「イカ東」と揶揄されていると話すが、「好きなことがある」人は強いだろう。親世代に比べると経済面が不安定な昨今、「好きなことがある人が強い」という風潮は存在感を増している。古代史という情熱を注げる対象を持つ小山は時代の勝ち組と言っていいだろう。

 しかし、そうした「好きなことがある人が強い」という言葉は「学歴があればいい」とする、かつての刷り込みと変わらない。好きなものがない若者の苦しさ、切なさは益田が苦しんでいるように深いのではないだろうか。私自身も振り返ると、若い頃は「モテ」が全盛の価値観だったので、それで随分苦しんだ。好きなもの・学歴・モテも、あったら“よりいい”だろうが、なくてもほかに楽しく生きる道はあるし、それがないから「終わり」では決してない。

 こう生きたほうがいいという価値観なんて、時代や世代によってあっさり変わる。若い人ほど振り回されてしまいがちだが、どうかそんなものに振り回されないでいてほしい。

 次週のザ・ノンフィクションは『ザ・ノンフィクション それでも僕は生きていく ~ももちゃんとの約束~』。“126万人に1人”といわれる希少難病・アイザックス症候群など4つもの難病を抱える香取久之。仲間たちとNPO活動を始めるものの借金は3000万を超え、さらにステージ4の大腸がんが見つかってしまう。香取と、難病を抱える少女ももちゃんの日々。

石徹白未亜(ライター)

専門分野はネット依存、同人文化(二次創作)。ネット依存を防ぐための啓発講演も行う。著書に『節ネット、はじめました。』(CCCメディアハウス)など。

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いとしろ堂

最終更新:2020/08/11 12:37
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