芸能
いろんな業界から頼られすぎなYouTube

落語家YouTuber・春風亭一之輔が大ヒットのウラで……“再生数3ケタ”若手落語家の「シビアな状況」

2020/04/29 13:00
増田家こみみ(ライター)

 第二次世界大戦の最中ですら明かりを灯し続けたという都内の各寄席が、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため続々休業し、落語会やイベントが中止となっている。寄席の歴史を揺るがすこの緊急事態に、一人の落語家が立ち上がり、ネット上で反響を呼んだ。

 4月17日に公式YouTubeチャンネルを開設した春風亭一之輔は、「今最もチケットが取れない」と言われるほど、当代きっての人気を誇る落語家。東京・上野の「鈴本演芸場」では、4月21〜30日に一之輔が夜席で“トリ”を務める予定だったものの、寄席の休席により全てが中止となっている。

「一之輔は初投稿の動画にて、『今、全然落語をやってません。退屈です。暇です』と嘆き、寄席の最後を飾る重要な“トリ”を任されていただけに、『悔しいです』とも口にしていました。そこで壇上に上がるはずだった時間に合わせ、4月21日から30日までの期間限定で、YouTubeの生配信で落語を披露することにしたそう。動画では、『聞いてくれないとお金が入らないんだよ!』と本音が漏れる場面もありました」(芸能ライター)

 すでに8回の配信を終えているが、本来の寄席と同じく、演目は毎日異なっている。さらに、初心者でも落語を気楽に楽しめるよう、「寄席入門 前編・後編」として、解説動画も事前にアップされた。

「YouTubeのコメント欄には、『一之輔師匠の落語がYouTubeで拝見できるなんて! ありがたい!』『これぞピンチをチャンスに変える好打ですね。頑張ってください!』と落語ファンからのエールが送られているだけでなく、『新型コロナの流行が落ち着いたら、寄席に行ってみようかな』『初心者でもわかりやすい動画。新しい楽しみが見つかりました』といったコメントもあり、“新規ファン”の獲得にもつながっているようです。再生数は多いもので14万回を突破(4月28日現在)しており、窮地に陥った演芸界を支える手段になるかもしれません。広告収入を狙い、彼の後に続く落語家が増えるのではないでしょうか」(同)

 しかし、一之輔のような“当代の人気者”を除く落語家は、依然厳しい状況に置かれているようだ。

「一之輔が動画の中で『落語家というお仕事は、お客さんがいないと落語ができないんです』と言っているように、客からの笑い声などが聞こえない中で行う動画配信は、寄席とまったく勝手が異なります。そんな環境の違いにも対応できる実力と、落語家としての知名度がないと、YouTubeで収益を出すのは難しいでしょうね。実際のところ、ここ数日の間に公開された若手落語家のYouTube動画を見てみると、ほとんどが再生数3ケタというシビアな状況です。ネット上には『やっぱりお客さんの笑い声が聞こえないと寂しい』『やはり落語は生で聞くに限るな』というコメントも見受けられます」(同)

 動画配信サイトを活用した新しい試みは、落語家にとってどのような未来をもたらすのだろうか。

増田家こみみ(ライター)

関東在住のフリーライター。広く浅く、時々沼に落ちるエンタメ好き。小学校では校内ニュースを集めた自作新聞を毎日発行。大人になった今は、酸いも甘いも噛み分けるホットな話題をお届けしたいと思います。

最終更新:2020/04/29 13:00
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