コラム
老いてゆく親と、どう向き合う?

「父のせん妄で、もうめちゃくちゃ」育児と仕事、両親の病――追い詰められた自宅介護の果てに……

2020/04/26 18:30
坂口鈴香(ライター)

 しかし、美談で終わらないのが人生だ。

 自宅に戻った謙作さんは、もう現実は見たくないとでもいうように、ひどいせん妄状態に陥った。

「そこからはもうめちゃくちゃでした。『煙草を落として火がついた』と言って騒いだり、夜中に着替えて外に出ていこうとしたりする。突然片付け出して一晩中ガタガタと片付ける。突然リビングを指さし『あそこに男がいる』と怒り出す。トイレに行くのも間に合わなくなり、漏らす……。いっときも休めず、私と娘は疲弊していきました」

 1カ月もしないうちに、謙作さんは大量の下血をした。意識が混濁している謙作さん車いすに乗せたまま、2時間待ってようやく診てもらった病院では、薬の副作用によるものだと言われ、何の処置もしてくれなかったという。

「これは介護で何とかなる範疇ではない。医療処置が必要だろうと思い、病院内の地域連携室に相談したのですが、職員の反応は冷たいものでした。『ケアマネに言って、おまるを用意してもらってください』で終わり。『父が昼夜逆転しているし、私たち家族はもうまともに寝ていないんです。どこか診てもらえるところがないんですか』とケアマネに訴えても『ありません』と。私は追い詰められていました。孫を置いて仕事に行こうとする娘に、爆発してしまったんです」

 もはや、限界だった。

――続きは5月2日(日)公開

坂口鈴香(ライター)

終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終末ライター”。訪問した施設は100か所以上。 20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、 人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

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最終更新:2020/04/26 18:30
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