カルチャー
一般社団法人「MY TREE」代表理事・森田ゆり氏寄稿

「外出自粛」「休校」で懸念される虐待増加――“加害親の回復” なくして子どもは守れない

2020/04/05 13:00
一般社団法人「MY TREE」代表理事・森田ゆり

『虐待・親にもケアを』(築地書館)

 「虐待をした親の回復支援」の取り組みは、制度的・予算的支援がごくわずかです。虐待に至ってしまった親の回復や重要性、緊急性が広く認識されていないこと、児童相談所は虐待通告対応で忙しすぎること、プログラムの受講命令制度がないことなどが理由だと考えられます。しかし、親の回復によって、どれだけの社会的経済的コストが軽減できるかは計り知れないのです。

 乳児院(編注:孤児となった乳児の入院と援助を目的とした児童福祉施設)を措置する経費は、東京都の場合、1年間で1人につき約682万円と試算されています(17年日本財団「子どもの家庭養育のコスト構造に関する調査報告書」より)。「MY TREE プログラム」を10人の親に提供するためにかかる経費は約150~200万円です。親の回復ケアに公的資金を使うことは極めて費用対効果の高いことなのです。たとえ子どもを親から分離して施設に措置しても、その間に親の回復がなければ、子どもは家に帰れません。帰したために再虐待となってしまったケースも少なくありません。

 虐待に至ってしまった親も変われることを、私たちは19年間の経験から知っています。本人がそれを望みさえすれば、人間は変わることができるのです。嵐の日、折れずにしなることができる木のように、大地に根を張る生き方は、誰にでも可能なのです。

■森田ゆり(もりた・ゆり)
作家、「MY TREEプログラム」(虐待に至った親の回復)代表理事。 元立命館大学客員教授、元カリフォルニア大学主任研究員。 1981年からCalifornia CAP Training Centerで、 1985年からはカリフォルニア州社会福祉局子ども虐待防止室トレーナーとして勤務。 1990年からカリフォルニア大学主任研究員として、多様性、 人種差別、性差別ハラスメントなど、 人権問題の研修プログラム開発と大学教職員への研修指導に当たる 。1997年に日本でエンパワメント・センターを設立し、行政、 企業、民間の依頼で、多様性、人権問題、虐待、DV、 しつけと体罰、性暴力、ヨーガ、 マインドフルネスなどをテーマに研修活動をしている。 虐待に至ってしまった親の回復プログラムMY TREEペアレンツ・プログラムを2001年に開発し、 全国にその実践者を養成、 19年間で1138人の虐待言動を終始した修了生を出している。 第57回保健文化賞、朝日ジャーナル・ノンフィクション大賞、 アメリカン・ヨーガ・アライアンス賞など受賞。

最終更新:2020/04/05 13:00
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