暮らし
[連載]白央篤司の「食本書評」

『藤井弁当』書評:15年間お弁当を作り続けた人気料理研究家による、「お弁当のワンパターン化」が実用的!

2020/03/14 19:00
白央篤司

 ゆでた野菜と卵焼きを、基本的な調味料だけで、なるたけ手軽かつシンプルに、どう味変化させていくかも綿密に考えられている。こういう仕事こそが家庭料理研究であり、日々の家仕事に携わる人々を助けるものじゃないだろうか。

 たとえばインゲンだったら、海苔和え、ゴマ和え、粒マスタード和え、紅ショウガ和えの4品が紹介されている。ゴマ和えは私も作るが、藤井さんは醤油とすりゴマのみで和える。私は普段、ここにだしと少々の砂糖も加えているが、やってみたら醤油だけでじゅうぶんおいしい。ごく一般的なメニューの「すっきり化」が、本書内のあちこちで感じられる。「最低限の味つけで、じゅうぶんでしょう?」と教えてもらった感じ。自分の抱えていた手間が、ちょっとずつ消えていく。

 主菜はすべて「1人前80g」で統一。副菜の野菜は代表的な12種類を挙げ、それぞれひとり分の適量、切り方、ゆで時間が提示される。2週間も繰り返せば、肉、魚介、野菜のひとり分にちょうどいい量、加熱時間が自分の中に入ってくるだろう。もやしと豆もやしで随分とゆで時間が違うこと、セロリは薄切りにすれば本当に短いゆで時間でいいことなど、私も発見が少なくなかった。

以上、すべての写真は白央篤司撮影

 紹介されているメニューから、気になったものをいろいろと作ってみた。サケの「マヨ焼き」はマヨネーズをひいて油として使い、同時に調味料としてしまうやり方に目からウロコ。インゲンの紅ショウガ和えも新鮮、ゆでで絞って紅ショウガで和えるだけ、味つけが一発で決まる。家人にも好評だった。

 面倒な日は、それこそ卵焼きか野菜おかずのどちらかを省略したっていいだろう。インゲンやブロッコリーは冷凍商品を使えばさらに手間もカット、保存期間も長くなる。

 弁当作りを始めようという方、そして弁当作りにマンネリを感じている方、双方におすすめしたい一冊。あとがきにある、「もっと気楽でいいんだよ」という藤井さんのメッセージが、折にふれ効いてくると思う。

白央篤司(はくおう・あつし)
フードライター。郷土料理やローカルフードを取材しつつ、 料理に苦手意識を持っている人やがんばりすぎる人に向けて、 より気軽に身近に楽しめるレシピや料理法を紹介。著書に『 自炊力』『にっぽんのおにぎり』『ジャパめし』など。

最終更新:2020/03/14 19:00
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