サイゾーウーマンセックスを拒む女と拒まれる男 wezzy セックスを拒む女と、セックスを拒まれる男。夫婦間のすれ違いはなぜ起きる? 2020/02/10 20:00 サイゾーウーマン編集部(@cyzowoman) 近年、夫婦間のセックスレスを題材にした作品が急増している。『夫のちんぽが入らない』『今日も拒まれてます~セックスレス・ハラスメント 嫁日記~』『あなたがしてくれなくても』……創作やエッセイ問わず、いつも主人公になるのは女性だ。 さらに2019年9月には、際立って拒絶の姿勢を示したエッセイ『夫のHがイヤだった。』(亜紀書房)が発売。夫との性生活が著者であるMioさんの体を蝕んでいく様子を、痛々しくも克明に描き話題となり、多くのメディアでも取り上げられた。 そんななか、ついに男性の口からセックスレスが語られる作品が登場したのだ。小説『それでも俺は、妻としたい』(新潮社)の著者である足立紳さんが描く主人公・豪太は、妻・チカから罵詈雑言を浴びせられても、めげずに妻とのセックスに挑んでゆく。 セックスを拒む女と、セックスを拒まれる男ーー。Mioさんと足立紳さんの、絶対に相容れない立場によるセックスレス対談をお届けします。 ーー足立さんは『夫のHがイヤだった。』を読んでどう思われましたか? 足立紳さん(以下、足立):タイトルにインパクトがありますよね。たいていの男性はまずそこに引っかかると思います。僕もすぐに表紙の写真を撮って、仕事仲間に「いまこういう本を読んでいるんだけど」ってメールをしたくらいです。 仲間のなかの結婚10年以上の男性たちは、みんな「うわー聞きたくない」といった反応を示していました。僕もプロローグから「これはヤバい……」と思いつつ、読むうちにわかるのは、夫とのセックスに肉体的な痛みがともなっていたのは、心身共に相当苦痛だっただろうなということ。 僕自身、妻をはじめ、人数は少ないですがこれまで付き合ってきた女性たちは、ガンガンいってくるタイプが多かったんです。Mioさんは夫にイヤなことをいわないタイプだったんですか? Mioさん(以下、Mio):イヤなことがあったらそもそも付き合わないと思っていましたし、イヤな部分はあまりなかったんですよ。 足立:セックスときの痛みはイヤな部分ではなかったんですか? 「痛い」と伝えたりは? Mio:「痛い」「気持ちよくない」といったことを少しはいいましたが、わたし自身が「やっているうちに痛くなくなる、気持ちよくなるんだろうな」と思っていたんです。 “いい人”の夫と、自分を責める妻 足立:「痛い」と伝えると、元夫さんはどんな反応を示すんですか? Mio:耳に入っていないというか、「じゃあ痛くしないよ」でおしまいになってしまう。「どうして痛いんだろう」と寄り添うところまでは至らない感じでした。 足立:となると、「これ以上いっても無駄か」と思ってしまいそう。 Mio:そうですね。いってもわからないなら、「むしろわたしのほうが悪いんじゃないのか?」と思ってしまって、元夫が一方的に悪いとは思えませんでした。人間的にはすごくいい人で、自信を持って結婚しましたしね。 足立:たしかに、Mioさんのお父様が亡くなったとき、ひとりになったお母様の元へ「すぐに引っ越そう」という決断を下したところは、すごいと思いました。9割の男性はできませんよ。 Mio:そうなんです。いい人なんです。 足立:「セックスが痛い」ことで、どんどん関係が破綻してゆき、愛せなくなり、離婚するまでの経緯が描かれていますが、それでも離婚に至るまでは何年も要しているので、痛みがありながらも「それさえなければ最高の人だったんだろうな」というふうに読みました。僕が読んでいて気になったのは、Mioさんはあまりにも自分を責めすぎなのでは? というところです。 Mio:当時のわたしはセックスに関する知識がなくて、男性向けAVを見たことがある程度でした。元夫も、そうなんです。男性向けAVって、AV男優さんがいきなり挿入すると女優さんは途端に気持ちよさそうにするじゃないですか。あれが「セックス中の、女の正解」だと思っていたんです。いきなり胸を触られても気持ちよくないのが通常なのに、「気持ちよくないわたしがおかしい」んだと。 足立:女性は「自分がおかしい」と思いがちなんでしょうか? Mio:そういう方も多いですね。というのも、わたしが離婚した端的な理由は「夫のセックスを拒んだから」でしたが、こんな理由で離婚するのって自分くらい、つまり少数派だと思っていたんです。 でもわたしは現在、離婚業務を専門とする税理士、行政書士、カウンセラーとして仕事をしていますが、「夫のセックスがつらいから離婚したい」「セックスを拒むと八つ当たりされるのがイヤだ」といった声をたくさん聞いて、「AV女優と同じようにならなきゃダメだ」と勘違いしている女性が多いんじゃないかってことに気づきました。AV女優さんはみんな気持ちよさそうにしているけど、実際には演技ですよね。それで、わたしの経験を書こうと思ったんです。 足立:そんなふうに受け身の態勢の女性の方が多いんですね。僕の周りの女性は、「AVなんかファンタジーだから。あれって全部演技だから。信用してる男ってほんとバカだな」ってスタンスの人が多かったので。 たしかにろくな性教育を受けていない影響もあり、日本の男性はAVでセックスに触れる人がほとんどですよね。だから、AVの刷り込みで苦しんでいる女性がすごく多いという事実は、男性側はあまり想像できていないと思います。当時は「セックスってこういうもんなのか」と思いつつ、いまは「あれは演技だ」というのを前提で見ていますが。 「年収50万」という不甲斐なさ ーー『それでも俺は、妻としたい』の主人公・豪太の妻であるチカも、男性経験がそんなに豊富ではなさそうですが、Mioさんとは対照的に、なぜ豪太とのセックスであんなに主張できるんでしょうか。セックス中、「そのぺろぺろなめまくるのキモイからさっさと入れてイっちゃってよ。5秒っつったでしょ、あーウゼー」「何でこんなにパイ毛長いの、病気なんじゃないの」など、ディスりが小気味よく繰り出されていました。 足立:チカの母親も普段からそういうタイプ、ということかもしれませんね。逆に、母親が虐げられた家庭で育つと、我慢することが普通だと思い、主張できなくなってしまうことがありますからね。 ーーMioさんは、『それでも俺は〜』を読まれてどう思いましたか? Mio:すごい夫婦だなと思いました。「ここまでしていて別れないんだ」って(笑)。 ーーMioさんなら豪太と別れていますか? Mio:だと思います(笑)。相手に罵詈雑言をぶつける様がすごいなと思いつつ、でもあそこまでいえるのっていいなあとも思いました。と同時に、あそこまでいう相手と、なぜ一緒にいるんだろう? と疑問符が浮かびました。チカはなぜあそこまでいえてしまうんですか? 足立:元々ガンガンいう性格なうえ、豪太が不甲斐ないからどんどんひどくなっていったんです。 Mio:「年収50万円」という描写がありますが、経済的な不甲斐なさですか? 足立:そうでしょうね。 ーーとはいえ、チカは豪太とのセックスで性的快感を得ているのが印象的でした。 Mio:読んでいて、チカは性欲が強い女性なんだと思いました。セックス中に「トヨエツを妄想しているんだから、おまえは喋るなよ」といった場面がありましたよね。豪太が好きだからセックスをするというより、相手を使ったオナニーのようなセックス、といった感覚なんですかね。セックスしたからといって豪太と仲よくなるわけではないけど、つらいわけではないし、そもそもイヤではないんだろうなと。 足立:たしかに、「痛い」といった物理的な苦痛はないですね。 Mio:読んでいてうらやましいぐらいでした。「セックスはしたいけど、夫のことは気に食わないから、させない」というスタンスが。 ーーチカの性格は、読みはじめは驚きますが、徐々にキツイながらもかわいらしさも伝わってきました。そのキツさを真っ正面から受け止める豪太は大変だろうとは思いますが、なんといっても年収50万円ですし、受け止めざるを得ないんだと思いました。ケンカにはなるけど常に「すみません」というスタンスで、ケンカが原因で夫婦関係が破綻することにはならなかったのではないでしょうか。 Mio:年収について、チカは実際のところはそれほど気にしていないような気がします。 足立:豪太を責める材料のひとつ、という感覚だと思います。年収に価値観を置いている女性だったら、とっくに別れていますしね。 Mio:「お前の稼ぎが少ないから」といったチカの台詞がありますが、「それって男性にいっちゃおしまいな台詞じゃないの!?」ってハラハラしました。 足立:それは飛び越えてはいけない一線なんですか? 最終更新:2020/02/10 20:00 次の記事 『ザ・ノンフィクション』お笑い界の情なるもの >