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『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』お笑い界の情と情け「はぐれ者で生きていく ~借金とギャンブルと夢の行方~」

2020/02/10 21:00
石徹白未亜(ライター)

日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。2月9日放送のテーマは『はぐれ者で生きていく ~借金とギャンブルと夢の行方~』。落語団体に属さないはぐれ落語家の快楽亭ブラック、そしてその生き方に憧れた弟子、快楽亭ブラ坊の日々。

『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)公式サイトより

あらすじ

 フリー落語家の快楽亭ブラ坊、34歳。落語団体に所属していないため、「末廣亭」など寄席の高座には上がれず、落語を披露するのは飲食店やスナックだ。6年同棲していた彼女と折半するはずの家賃は3万円しか払えず、やがてそれすら払えなくなり、別れを告げられ部屋を引き払う。元彼女や愛媛の両親、知り合いから借りた金は総額300万円を超える。借金の原因はギャンブルだ。

 ブラ坊がその破天荒な生き方や落語センスに憧れ、弟子入りした師匠の快楽亭ブラックもまた、ギャンブルでの借金が2000万円を超え、立川談志から除名された過去がある。生き方に共通点はあるが、師匠・ブラックは平成12年には春風亭昇太らとともに文化庁芸術祭賞演芸部門優秀賞を受賞、 今も全国からお座敷がかかり爆笑をかっさらう。一方のブラ坊は客がまったく来ない中で落語をすることもあり、技術にも雲泥の差がある。ギャンブルからも足が洗えず、落語に身の入らない日々が続く。

 そんな中、ブラ坊はまだ師匠から客前での披露について許可を得ていない演目を、勘違いから披露してしまう。それを知ったブラックは、ブログに「破門だ」と怒りを綴るが、ブラ坊にしてみれば、直接言わずブログへ書いたことに不満を抱き、素直に謝れない。二人の関係はギクシャクしたものになる。

謝れないブラ坊が取った行動

 ブラックとブラ坊のすれ違いは、よくある「言った/言わない」が原因ともいえる。どっちかが明確に悪いと言い切れない、ギクシャクした冷戦関係は、職場や家庭にゴマンとあるだろう。こういうとき、下の立場の側が、上の側にとりあえず謝る、という選択肢だってあるはずだが、ブラ坊はすぐに謝らずしばらく考え、やはりブラックから稽古を受けたい、と考えが固まったのちに、謝罪文を携え師匠に詫びていた。

 もちろん、早期解決を試みたほうがいい場合だってあるだろう。時間がたって関係がさらに悪化したり他人を巻き込んで大ごとになったり、取り返しのつかないことになることだってある。しかし、この今回のブラ坊の「納得いかないうちは謝らない」もわかる気がする。納得いかない状態で謝っても、結局何かしこりが残り、それが後々膨らんで、取り返しのつかないことになり、ということもあり得る。どちらが正解と言い切れるものではない。謝るのは難しく、大変だ。

 ブラ坊はブラックに謝る際、ブラックの好物で、小田原でしか買えないと思われる一つ千円もする「夏柑ゼリー」3つと反省文を携え、ブラックの出張先である名古屋へと向かう。そして、関係者を交じえた打ち上げで、酒を飲み上機嫌のブラックが「夏柑ゼリーを持って詫びに来たな」と笑い、二人はようやく和解する。買うのが大変そうなゼリーを携え、東京にいるときでなく、名古屋出張中を狙ってしおらしく謝りに行くあたり、ブラ坊、こう見えてなかなかの策士ではないだろうか。

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