『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』お笑い界の情と情け「はぐれ者で生きていく ~借金とギャンブルと夢の行方~」

2020/02/10 21:00
石徹白未亜(ライター)

立川志らくのブラックへの思い

 番組中、立川一門である落語家、立川志ら玉がブラックを訪ねてきた。ブラックに古典落語を披露し、ブラックから客前で演じる許可を得た。志ら玉の前名は快楽亭ブラ汁 で、もとはブラックの弟子だったのだ。ブラックは談志から除名された際、弟弟子にあたる立川志らくに志ら玉を預ける。

 志ら玉によると、「もう(除名された)ブラックとは、付き合うなと言った人もいるといううわさは聞きましたけど、(立川)志らくは『ブラック兄さんのところに行ってやれよ、たまには帰ってやれよ』と言ってくれたんで」 とのことだ。

 個人的に、志らくといえばMCを務めている情報番組『グッとラック!』(TBS系)のイメージが強く、番組での発言がネットニュースになって炎上してる人、という印象だった。過去には、自分の劇団の手伝いに(落語の)弟子たちが来なかったことで、「全員破門にするか前座に降格するか」とツイートし波紋を呼んだこともあった。落語のイベントならともかく、志らくの劇団の手伝いなら、弟子にしてみれば関係ないとも言える。この一件では、弟子たちに同情してしまった。

 しかし、志ら玉のくだりを知ると、志らくはよくも悪くも情に厚く、その分、他人にも自分と同等の“情”を求めるタイプに思える。それは昭和的でもあり、マッチョ的ではないだろうか。しかしこれは、志らくの性格というより「落語界」、引いては「お笑い界」全体がそういう感覚をベースにしているようにも感じられる。

 ブラック、ブラ坊ともにギャンブル狂というのも、なんとも“マッチョ”だ。お笑いを志す人の中には、そうした空気になじめず苦労する人もいるだろうが、一方で人とのつながりが希薄な個人主義の時代には希少な、情みなぎる世界がたまらない人だっているだろう。そういう人にとって、「お笑い界」は幸せな場所なのかもしれない。

 次週の『ザ・ノンフィクション』は「もう一度 お父さんに逢いたい ~ホストの僕とフィリピンパブ嬢の母~」。大阪のホストクラブで働く日本人の父、フィリピン人の母を持つレオが、一度しか会ったことのない父親を捜す。

石徹白未亜(ライター)

石徹白未亜(ライター)

専門分野はネット依存、同人文化(二次創作)。ネット依存を防ぐための啓発講演も行う。著書に『節ネット、はじめました。』(CCCメディアハウス)など。

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最終更新:2020/02/10 21:00
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