芸能
『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』中高年の「図太さ」は若者にない武器「母と娘の上京それから物語 ~夢のステージ ある親子の8年~」

2019/09/30 19:26
石徹白未亜

NHKの金曜夜の人気ドキュメント番組『ドキュメント72時間』に対し、こちらも根強いファンを持つ日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。9月29日の放送は「母と娘の上京それから物語 ~夢のステージ ある親子の8年~」。舞台女優を目指し上京した娘・渡邊美代子と娘の夢を過剰に応援する母・美奈世のステージを目指す日々。

『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)公式サイトより

あらすじ

 舞台女優を目指し高校卒業後長野県から上京した美代子。オーディションを受け続けるも芽が出ず生活に追われる日々が続く。それから3年、22歳になった美代子に母、美奈世は地元のご当地アイドルの仕事を紹介する。しかし美代子は、10歳近く年下の他メンバーとなじめず、結局3か月で辞めてしまう。それからさらに4年後、26歳になった美代子はアルバイト先の先輩と結婚し子どもをもうけていた。家賃が安いからと長野へ戻ることを決め、夢を追うことから「卒業」する。

 一方の母・美奈世は、美代子の夢をサポートしていくうちに、芸能関係の仕事を目指していた少女時代の気持ちが再燃。新しいご当地アイドルユニットの結成を手伝ってほしいという話が舞い込んだ際には、それに奔走、娘・美代子がもともと縁のあった作曲家と意気投合し、番組の最後には作曲家の高円寺のライブで歌を披露するなど、娘に代わり夢を追い続ける。

若者は不安でいっぱい――娘・美代子の場合

 娘、美代子は理想や夢(舞台女優になること)はあるものの、具体的な像(どんな舞台女優になりたい、誰の作品に出たい、舞台女優としての自分の強みとは何かなど)は放送を見る限り今一つ見えず、どこかフワフワとしている。

 さらに、仕事がない状態で母が取ってきた地元・長野のご当地アイドルの仕事も、自分が望んだ仕事でないこともあってか、やる気をあまり感じない。それは、10歳近く年下のメンバーから「気を使われてるのもわかってる」とこぼしたり、長野での仕事が終わると、すぐ東京へ戻る生活からも感じられる。3カ月でアイドルの仕事を辞めた後、スタッフにどうするのか問われても「将来的なことも決めかねているから」 と、またしてもフワフワしている。

 「ビジョンはあるようだが、どうもフワフワしてて現実感がない」「受け身でやる気を感じない」というのは、何も美代子に限らず、むしろ若者はそういうほうがスタンダードなのではないだろうか。

 若者は年長者に比べ経験や実績が乏しい。経験が乏しく「実際の落としどころはこんなもん」というのを会得できていないため、理想は逆に高くなりがちだ。よって若者は「高い理想とさえない現実のギャップ」に苦しみ、不安に駆られやすい。そして不安が強いと失敗することがますます怖くなるので、つい受け身がちになったり、及び腰になって、やる気がないように見えてしまうのではないだろうか。

 結婚して子どもができた美代子は、夢を追っていた日々の焦燥感から解き放たれたのか、イラついた雰囲気がなくなり、フワフワしたことも言わなくなり、地に足のついた落ち着きを見せていた。美代子にとっては、こう生きる方が向いているのだろう。しかし、夢を追っていた日々は無駄ではなかったと思う。「やりたくてやってみたけど、ダメだった」という経験を積むことで、現実の落としどころを知る大人になっていくのだろう。

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