[再掲]インタビュー

池袋暴走事故で親子死亡――高齢ドライバーが「免許返納」を拒む実情と、家族が抱える苦悩

2019/04/24 18:55
サイゾーウーマン編集部(@cyzowoman

 4月19日、東京都豊島区東池袋4丁目の都道交差点で、飯塚幸三さん(87歳)の乗用車が、歩行者を次々とはね、ゴミ収集車やトラックに衝突する事故を起こした。松永真菜さん(31歳)と長女・莉子ちゃん(3歳)は、病院で死亡が確認され、40~90代の男女8人が重軽傷を負った。

 飯塚さんは事故後、息子に電話をかけ「アクセルが戻らなくなって、人をたくさんひいてしまった」と話していたというが、交通捜査課によると、車内にアクセルペダルの動きを妨げるような障害物はなかったとのこと。また、事故現場には、ブレーキ痕もなかったと伝えられている。

 今回の事故で注目を集めたのが、飯塚さんの「年齢」だ。一般的に、高齢になると認知機能が低下するとされる中、87歳という年齢で自らハンドルを握り、事故を起こしたことに対して、世間からは「なぜ免許を返納しなかったのか」「自分の認知力を過信していたのでは」「家族は何も言わなかったのか」といった怒りと疑問の声が飛び交うことになった。真菜さんの夫も、24日に都内で記者会見を開き、「少しでも運転に不安がある人は、運転しないという選択肢を考えてほしい」と強く訴えた。

 しかし、高齢者の免許返納に関しては、さまざまな問題があるようだ。昨年5月、神奈川県茅ヶ崎市で、90歳の女が運転する乗用車が暴走し、1名が死亡する事故が発生した際、サイゾーウーマンでは、「家族による免許返納の説得が難航する現実」についての記事を掲載。高齢者の加齢性変化について知り、どのように、高齢者の免許返納問題に取り組んでいくべきかを考察している。池袋の事故のニュースを受け、「もし家族が高齢になったとき、車の運転をやめようとしなかったら……」という不安が頭をよぎったという人は、ぜひこの機会に読んでいただきたい。
(編集部)
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(初出:2018年6月2日)

「認知症でなくとも性格は変わる」高齢ドライバーの免許返納問題、家族の説得が難航するワケ

 5月28日、神奈川県茅ヶ崎市の国道で、90歳の女が運転する乗用車が、次々と歩行者をはね、うち1名が死亡するという事故が起こった。超高齢社会を迎えつつある日本において、“高齢ドライバーによる自動車事故”は、深刻な問題となっており、警視庁交通総務課によると、事故全体に占める高齢運転者(原付以上<特殊車を含む>を運転している65歳以上の者)の事故割合は、平成20年は11.1%だったが、29年には17.9%に増加しているという。

 警視庁のサイトを見ると、「高齢運転者は、自分で安全運転を心掛けているつもりでも、他人が客観的にみると安全運転とは言えないところがあると言われています」と指摘し、安全運転を支援するシステムを搭載した車(安全運転サポート車)の普及啓発に取り組んでいると紹介される一方、運転免許の自主返納サポートにも尽力していることがうかがえる。

 高齢運転者の事故と聞いて、一番に思い浮かぶのは、やはり“認知症”による影響だろう。2017年3月12日に施行された改正道路交通法では、75歳以上の免許保有者は、免許更新時に約30分の認知機能検査が必要となり、認知機能が低下している恐れがある場合は、実車指導と個別指導を含めた計3時間の「高度化講習」を受けて免許更新、また認知症の恐れがある場合は、後日臨時適性検査、または医師の診断が必要で、認知症だと判明した場合には、免許証の停止または取り消しとなる。これに加えて、特定の違反行為があった場合、臨時に認知機能検査も実施されているのだ。

 こうした対策が取られてはいるが、家族としては、認知症でなくとも高齢になれば運転を控えてほしい、免許を返納してほしいのが本音だろう。事実、今回事故を起こした容疑者も、3月に運転免許証を更新した際の認知機能検査で問題は見つからなかったものの、息子から免許返納を勧められていたとのこと。それでも、容疑者は免許を返納せず、大事故を起こしてしまったのだ。

高齢ドライバー
この悲劇が繰り返されることがないように
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