大谷翔平の“お嫁さん探し”があり得ない 「遺伝子残して」というグロテスクな要望

2019年、最も結婚の動向が注目されている有名人は大谷翔平選手ではないだろうか。大谷翔平選手は昨シーズンからメジャーリーグに挑戦し、本塁打22本を放つなど大活躍。日本人メジャーリーガーではイチロー以来の17年ぶりとなる新人王に選出された。

 こうした快挙にも関わらず、11月に行われた凱旋帰国会見で、メディアの関心は大谷選手の結婚に向けられていた。ある記者が「結婚の予定」の質問を投げかけると、大谷は、「全くもって(結婚の予定は)ない」と苦笑。それでも記者は、「何歳くらいまでにご結婚されたいとか、ご自分のなかでありますか?」と食い下がったものの、大谷は「特にないですね」ときっぱりと否定していた。この場面は『バイキング』(フジテレビ系)をはじめ、各番組で大きく取り上げられた。

 大谷翔平選手は独身であるため、時代を生きるトップアスリートがどんなパートナーを選ぶのか、大きな関心を集めることは理解できる。しかし、恋愛や結婚は個人のプライベートな領域であり、メディアが面白半分ではやして立てるものではないはずだが……。

 2019年の年明け早々にも、大谷選手の結婚にまつわる話題がテレビのネタにされた。1月10日の『ナカイの窓』(日本テレビ系)では、「勝手にランキングを作ろう!」というテーマの下、「美味しすぎるコンビニグルメ」や「最高のツッコミをする芸人」などのランキングを出演者がディスカッションする様子が放送された。だが、その中に「日本の宝・大谷翔平のお嫁さんにしたい人」というテーマが含まれていたことに、筆者は違和感を覚えずにはいられなかった。

 番組中、進行をする陣内智則は「大きなお世話でしょうけども」と前置きをするも、「大谷翔平くんに“似合う”お嫁さんをみんなで話し合って決めようじゃないか」と議論を始めた。土田晃之は元ハンマー投げ選手である室伏広治の妹・室伏由佳の名前を挙げ、中居正広は「すげぇDNAだね」と興奮した様子を見せた。さらに、プロフィギュアスケーターの浅田真央や陸上選手の福島千里、ソフトボール選手の上野由岐子など女性トップアスリートの名前が飛び交い、“大谷選手のお嫁さん探し”は大いに盛り上がる。

 大谷選手が大スターであることは疑いようがないが、その結婚相手(正確に言えば、“子供を作って欲しい女性”ということなので、よりおぞましい)をテレビのネタにすることには、怒りを通り越して呆れるほどだった。さらに、大谷翔平選手の「DNA」を“使って”、日本の未来を担うトップアスリートを“作る”という全体主義めいた考え方は、ただ気持ち悪いのひと言に尽きる。もちろん、名前を挙げられた女性アスリートたち対するセクハラも懸念され、はなはだ時代錯誤な内容であった。

アスリートの恋愛や結婚、出産は「公共事業」ではない
 なぜ、トップアスリートの恋愛や結婚、出産に対して、こうも平然とデリカシーを欠くメディアが多いのだろうか。こうした事例は枚挙に暇がない

 2016年放送の『行列のできる法律相談所 クリスマスザンゲSP』(日本テレビ系)に出演した桐谷美玲は、「FIFAクラブワールドカップジャパン2016」のキャスターを務めていた際に、明石家さんまから「桐谷。今夜、ロナウドに抱かれておけ。未来の日本代表のためにロナウドのDNA、ゲットしてこい!」とアドバイスされたことが不快だったと告白した。

 桐谷は、笑いを交えつつも明石家さんまに「懺悔してほしい」との趣旨でこのエピソードを明かしていたのだが、明石家は「俺は真剣に言うたんや。ロナウドのDNAが日本サッカー界に必要や、と。下ネタでも何でもないねん」「芸能界の先輩の言うことを聞いてくれたらいいねん」と言って憚らなかった。

 メディアの世界では、「トップアスリートのDNAは優秀」というネタはいまだ横行しているし、「優秀な子孫を残すべき」というトンデモない理屈を振りかざすことは少なくない。

 公共の電波に乗せられた価値観に、大衆が影響される例は珍しくない。2015年にハンマー投げの室伏広治氏が一般女性と結婚した際、世間の一部から落胆の声が挙がったことは記憶に新しい。室伏選手には、“霊長類最強の女性”と評される元レスリング選手・吉田沙保里と結婚し、「優秀な子を生む」ことを期待していた人が多かったようで、ネットは祝福ムード一色とはならなかった。これに対し、当時から「ネタにするなんて失礼すぎる」「セクハラじゃない?」という真っ当な意見が上がっていたが、2019年現在も、事態は変わっていないように思える。

 その吉田沙保里が先日引退し、会見で「女性としての幸せというのは絶対につかみたいなと思っていますし、夢と言ったらそういうことになるかもしれません」と話したが、情報番組『スッキリ』(日本テレビ系)においてRIKACOが次のように発言してネットで物議を醸した。

 「やっぱり結婚してほしい。今まで選手としてすごい大変だったから、今度は結婚して、お子さん持って。これだけすごいいろんな経験をしてきているから、旦那さんにもすごい最強のサポートをすると思うし、子育てもすごい楽しみ。どんな子育てするんだろうと思って」

 この発言に、メインMCの加藤浩次が「いろんな幸せがありますから、どれを選ぶかわかりませんけどね。選択肢はこれから考えていくんじゃないですか」とフォローしたが、“女性の幸せ=結婚と子育て、夫のサポート”という価値観を、何の疑いもなく披瀝したRIKACOへの批判の声は大きかった。

 当たり前のことだが、トップアスリートも同じ人間であり、競技以外の人生がある。必ずしも結婚して子孫を残さなければならないわけではないし、ましてや他人のネタにされるようないわれはない。

 ただ、2019年 1月8日にNHKが発表した調査によると、「必ずしも結婚する必要はない」と答えた人は68%もおり、「人は結婚するのが当たり前だ」(27%)を大きく上回った。時代は過渡期にあり、少しずつ個人の自由が尊重される社会になりつつあるのは喜ばしいことだ。

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