カルチャー
婦人科医・早乙女智子先生インタビュー(後編)

「性に関して、自分だけは幸せになりなさい」婦人科医が語る、女性の権利を奪われない生き方

2018/12/05 16:00
婦人科医の早乙女智子先生

 前回、婦人科医の早乙女智子先生に「セクシュアル・ライツ(性の権利宣言)」に触れながら、女性の人権がないがしろにされている現状を伺った。今回は、女性がもっと生きやすくなる方法について探る。

前編はこちら:「男も世間も、女にラクをさせたくない」性の現場から語る、女性権利“不在”の日本の現状

■嫌なセックスをしないことで、身体権が守れる

――女性は、自分を守るためにどうしたらいいのでしょうか?

早乙女智子先生(以下、早乙女) 嫌なセックスをしないことです。「お茶飲まない?」と聞かれたら、「飲まない」とか「いりません」と答えられるでしょう。それと同じです。セックスするかしないかをはっきりさせる。いるかいらないかをはっきりするだけです。「今はいいわ」「あなたとは飲みたくない」「砂糖はやめて」それだけのこと。相手のために我慢してセックスしたら、その我慢は性搾取でしかない。男性は絶対に自分が痛いセックスはしないでしょう。それなのに、女性には痛いセックスを最初から強要している。挿入は、女性にとっては後戯でしかありません。前戯が女性にとってのセックスです。つまり、前戯をしない挿入だけのセックスは暴力。女性の身体権が奪われています。それを愛とかいう男がいたら、「馬鹿野郎!」って叫んでやればいい。

――日本でセックス嫌いの女性がいるのは当然の状況のように思えます。暴力をなくすには、どうしたらいいでしょうか?

早乙女 まず、暴力とは何かを知ることですね。暴力に当たるものは非常に範囲が広いんです。精神的、身体的、性的、経済的、社会的……言葉の暴力もそうです。落ち度もないのに、故意になじることも暴力。一度振るった暴力を、再び振るうそぶりを見せることも、暴力に当たります。夫婦間でも、合意がない場合のセックスは暴力。デートDVも、もちろん暴力です。社会的暴力とは、社会から隔絶させることです。例えば、男の名前をスマホから消させるとか、外出を禁止するとか、外出先から必ず電話を入れさせるのも暴力です。男性は、いつでも遅くなったり飲み歩いたりしているのに。日本の女性はすさまじく地位が低く扱われています。その上、日本にはまだ、中絶する女性を下に見る風潮が残っているのです。

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