婦人科医・早乙女智子先生インタビュー(後編)

「性に関して、自分だけは幸せになりなさい」婦人科医が語る、女性の権利を奪われない生き方

女性は、お金を生む手段を手放してはいけない

『セックス・セラピー入門 性機能不全のカウンセリングから治療まで』(金原出版)

――シングルマザーで、苦しい生活を余儀なくされている女性も少なくないですね。

早乙女 妊娠も出産もセックスも、みんなお金の問題なんです。男性と女性で入れ替えてみれば、おかしい仕組みがすぐにわかります。嫌な言い方かもしれないけれど、日本では愛だけでは生きていけないし、子どもも育てられない。フランスやオランダのように生活保障がちゃんとしていれば、シングルマザーでもちゃんと育てられるけれど、そうではないのです。お金がなくて、頼れる人もいない足場の危ないところで子どもを産んでも、いい人生ではなくなってしまいます。だから、妊娠して出産を控えた女性に必ず言うことがあります。「たとえ小さなお財布でも、絶対に手放しちゃいけない」ということです。妊娠中の離婚もよくあるので、とにかく妊婦さんは小さな預金でも取り崩さずに隠して取っておくように。妊娠出産しても、女性は絶対にお金を生む手段を手放してはいけないんです。

――妊娠出産は女性だけの問題ではないはずなのに、すべてを女性が背負っているケースも多いように思います。

早乙女 女性は、自分の体のことを自分で決めていいんです。月経をずらすのも自由。ピルを飲んで何十人と経験するのも自由。ただ、それにはリスクがあって、感染症や望まない妊娠の危険性があります。だからパートナーはたくさんいていいけれども、最低限コンドームは使ってほしいですね。自分の性生活について、いちいち他人にとやかく言われる筋合いはありません。もし言われても「関係ない」と耳をふさいで無視するくらいでいいんです。日本社会では、そうでもしないと権利が守られないと思います。

■自分が幸せになろうとみんなが思えば、社会はもっと良くなる

――日本の女性は、科学の恩恵を受けられず、情報も必要な人に届いてない。そんな状況の中で、どのように考えたら楽になるでしょうか?

早乙女 性に関して、自分だけは幸せになろうとすることです。もちろん他人に迷惑をかけずにですけどね。一番は、自分が周りの人に対して、小さな自己主張をしていくこと。同調圧力に弱い人は、まずは小さなことから始めないとだめ。自分の好きなものを選ぶようにしましょう。日本人の良さとして、ある程度の同調はいいと思いますし、混乱するのを避けるのは悪いことではないけれど、それが自分たちを苦しめてしまっている。

――苦しんでいる人がたくさんいるのに、どうしてこれだけ窮屈な社会ができてしまうのでしょうか?

早乙女 お母さんという立場の人が「自分さえ我慢していれば」と思ってやり過ごしている。でも、お父さんも「俺だって会社で我慢している」と思っている。こっちもつらいけど、そっちもつらい。いま日本は、非生産的な人生観になっています。同調圧力が強くなっていて、みんなが苦しいから、みんなが苦しいことを確認して満足しているのが現状です。でも、同調しているだけで、それが正しいとは限りません。そんな状態から次の世代は生まれにくいでしょう。「子どもを産め」と言うならば、「まず私たち女性を伸び伸び生きさせてください」と言いたいですね。まずは、子どものことより自分たちからですよ。

―――具体的には、どうしたらいいかを教えてください。

早乙女 自分の中のもう1人の自分を想定し、常に気持ちを確認してみる。そこでもし「嫌だ」と言ってきたら、「本当はどうしたいの?」と聞いてみる。日本社会は少しずつ変わってきたような気もするけれど、根本的な女性問題は、まだなくなっていません。だから「自分だけは幸せになりなさい」と患者さんに言っています。他人はどうでもいいんです。「子どもが幸せでいてくれれば私はいい」というなら、それでもいいですが、子どもから見たら、「かあちゃんは、なんだかわからないけど楽しそうだよね」というほうが絶対にいいと思います。「あなたのためにこんなに我慢している」は、不幸の連鎖にしかなりません。エゴに見えるけど、自分だけは幸せになりなさい。みんながそう思っていたら、みんなが幸せになる。余っていれば、周りの人にも分けてやりなさい。それでいいと思います。それが案外難しいけれど、やったらできますよ。みんなが幸せな社会、それが一番です。
(弥栄 遖子)

早乙女智子(さおとめ・ともこ)
日本産婦人科学会認定 産婦人科専門医。1986年筑波大学医学専門学群卒業。国立国際医療センター、東京都職員共済組合青山病院、ふれあい横浜ホスピタル勤務などを経て、現在は主婦会館クリニック勤務。「性と健康を考える女性専門家の会」副会長、日本性科学会認定セックスセラピスト。著書は、『LOVE・ラブ・えっち』(保健同人社)、『13歳からの「恋とからだ」ノート』(新講社)など多数。

最終更新:2018/12/05 16:00
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