コラム
【連載】別れた夫にわが子を会わせる?

子どもが「パパ、もうやめて」――復縁するも、夫の暴力は止まらず【別れた夫にわが子を会わせる?】

2017/09/27 15:00
Photo by Sander van der Wel from Flickr

『わが子に会えない』(PHP研究所)で、離婚や別居により子どもと離れ、会えなくなってしまった男性の声を集めた西牟田靖が、その女性側の声――夫と別居して子どもと暮らす女性の声を聞くシリーズ。彼女たちは、なぜ別れを選んだのか? どんな暮らしを送り、どうやって子どもを育てているのか? 別れた夫に、子どもを会わせているのか? それとも会わせていないのか――?

第8回 田中千恵美さん(仮名・30代)後編

 友人の紹介で英会話講師のイギリス人と知り合い、真面目な人柄に惹かれて交際を始めた田中千恵美さん。妊娠を機に結婚したものの、夫の仕事に対する田中さんの両親の口出しなどをきっかけに、彼が暴力を振るうようになる。臨月に近い頃、夫にレイプされた田中さんは、彼を説得し、精神科へ連れて行く。投薬治療により、しばらくは落ち着いたものの、子どもが1歳のときに、夫がナイフを振り回したため警察沙汰になり、別居することになった。
(前編はこちら)

■カウンセラーの警告を無視して、面会交流を始めてしまう

 2人は復縁に向け、カウンセリングを受け始める。

「担当してくれたカウンセラーの先生には『お互いの気持ちがちゃんと落ち着くまでは、一緒に時間を過ごすのはカウンセリングの間だけ。それ以外では会っちゃダメ』と警告されていました。だけど、彼のほうが我慢できずに電話をかけてきて、『子どもに会いたい』って電話口で泣きながら言うんです。それを聞いて私、たまらなくなりました。同居中、彼は父親として、すごくしっかりやってくれてましたし、子どものことは溺愛してましたからね。子どもと会えないことは地獄の苦しさでしょう。子どもに直接手を出したわけじゃないですし、何より父子関係が良好だったという事情から、わざわざ引き離す必要はないって思ったんです」

 田中さんはカウンセラーの警告よりも、彼に対しての心配が勝ってしまったようだ。面会交流を勝手に始めてしまう。

「なんだか私、彼のことがいたたまれなくなって、電話を切った後、彼にメールしたんです。『毎週末の日中、会っていいよ。ただし家には入れないし、私とも引き渡しのとき以外は直接話さないこと』って。以来、週末の朝、彼がやってくるようになりました。ドア越しに『行ってらっしゃい。午後×時になったら戻ってきて』って感じで子どもを送り出しました」

――面会させて大丈夫だったのですか? 約束は破られませんでしたか?

「私が取り決めた面会ルールもちゃんと守って、夕方には帰してくれるんです。もちろん、彼は平日に保育園とかに勝手に会いに行ったりもしませんでしたしね。給料が25万円しかないのに、養育費を毎月10万円振り込んでくれていたこともうれしかった。そうした信用の積み重ねで、彼への警戒心が緩んでいきました」

 その後、田中さんは、予定よりも早い復縁を決意してしまう。

「カウンセリングを受けている効果なのか、別居直後よりも、彼はだんだんと穏やかになってきてました。と同時に、健康状態がよくないのか、日を追うごとに痩せていったんです。日々、私が彼と子どもを自由に会えなくしていることで、こうなってしまったのかなって、ちょっと自分を責めるようになりました。暴力を振るわれたのにそんなふうに思うんですから、彼をまだ愛してたんでしょうね。

 そうして1年後、私は同居を了承しました。カウンセラーからは『まだ早いからダメ。同居はやめなさい』と、きつく言われました。5年ぐらいカウンセリングを受けてからようやく復縁というのが、一般的らしいんです。だけど私、カウンセラーの警告を聞き入れず、一緒に住み始めたんです」

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