子宮は女の象徴だと思っていた女性が、摘出してはじめて知ったポルチオの快感/神田つばきインタビュー「子宮を手放し、性の冒険に出た私」【1】

2017/07/28 20:00

 今回は連載「子宮にちんぽが届くまで~摘出前後のセックス~」の番外編として『ゲスママ』(コアマガジン)の著者、神田つばきさんにお話しを伺います!

「子宮にちんぽが届くまで」は子宮を摘出する前後で性感の違いがあるのかどうかを検証するために主人公が奔走するお話です。さて、「子宮摘出」という言葉には、ほかの臓器摘出(たとえば「盲腸を切る」など)とはまた違った、じっとりヘビーな質感、感じません? ホラ、「子宮を取ったらもう女性じゃなくなる」とか聞くじゃないですか。

 だけど、子宮なんざ、ただの臓器です。それ以上でも以下でもありません。女性性が宿る神秘的なモノでもないし、女性としての人生をまっとうするうえで絶対的に必要な臓器でもないんじゃないかなあ? というのが私の考えです。しかし、これはあくまでも私の個人的な見解です。体のことですし、100人女性がいれば、100通りの意見があるはず。

 子宮摘出された女性にそこのところをぜひうかがいたく思っていたところ、神田さんにお会いする貴重な機会を得ました。神田さんはフリーライターやAV制作の仕事に携わる一方、子宮摘出を経験された後にさまざまな性体験も積まれています。

「子宮とはなんなのか?」から「それにまつわる女性としての充実とは?」まで、神田さんにいろいろお聞きしました。

スペシャルゲスト・神田つばきさん
――本日はどうぞよろしくお願いいたします。

神田つばきさん(以下、つばき):今朝の3時ごろまで悩んでいて。このインタビューでお話することはとっても責任重大だから、怖がられたとしてもきれいごといわないぞ、と思ってきました。

――恐縮です!いろいろご教示いただければ幸いです。

子どものおかげで、ガンが見つかった?
――神田さんは子宮頸がんが見つかって子宮摘出されました。

つばき:そもそもガンが見つかったのは、3人目ができちゃったからなんです。離婚前、セックスレスだったころ、夫が急に襲いかかってきたことがあったの。セックスレスの人って、コンドームを持ってないんです。で、できちゃって。もう中絶しかないねって。いま思うとホントひどい。人殺しだってことさえ、私はわかってなかった。結婚する前に親から「望まない子どもを作っちゃダメよ」っていわれてきた延長で、堕ろすしかないと思ってしまった。その後、二度とくり返さないために避妊リングを入れたのですが、出血が続いたんです。リングを病院で出してもらっても止まらなかったので精密検査したところ、ガンでした。

つばき:その子のおかげで見つかったのかもしれないし、命を軽視したからバチが当たってガンになったのかもしれない。どっちなのか私にはわからない。このことはこれまで、ふたりの娘にはいえなかったんですけど、2週間前に話しました。子どもたちは「3人目の子どもが教えてくれたんだよ」って前向きにいってくれましたけど……。

――絶対バチじゃないです! もしそうだとしたら、男の人にもバチ当たってないとおかしいですし。こういうことに関しては、女性にばかり責任と反省を押しつけている社会がいびつな気がします。

――『ゲスママ』には神田さんが子宮摘出後、恋愛とセックスでご自身の女性性を確認していく姿が書かれています。なぜ確認する必要があったのでしょうか? 結婚・出産・育児経験のない私からすれば、子宮摘出前にそれらを経験されている神田さんの女性性には疑いがないのでは、と思ってしまうのですが。

つばき:呆れられちゃうかなと思いつつ、このことだけは今日話すと決めてここに来ました。私は母性がゼロなんです。なので結婚して出産して育児したけれど、まったく満足感を得られてないんです。結婚前は違ったんですよ。自分は仕事で自己実現できるような素敵な人間じゃないと決めつけていたし、「父親のいない家庭」という世代間の連鎖を切りたかった。だから結婚して子どもを産んで、幸せな家庭を作れば女性として全部叶うんだと信じていたんです。けど、やったら 全然むいてないのよねえ(笑)! ちっとも楽しくないし。

それはメスとして母として欠陥があるということだから、おそろしいことなんです。女性全般にあてはめられないことですが。

――私もたぶんそういうタイプですよ。子どもを産んでも満足感ないと思います。

つばき:世の中には私みたいになんの自覚もなく親になっちゃう女の人もいるんですよね。堕ろすことにも意識がない。出産することにも意識がない。母になる資格がぜんぜんない人が子どもを産んでしまうわけです。このことを伝えるために自分はいま生き延びてるんだなって思うしかないですよ。

子宮は女性の象徴なのか?
――『ゲスママ』には 「自分の『女』はどこに行ってしまうのか、女の象徴といってもいい臓器が廃棄される」とあります。現在でも、子宮は女の象徴だとお考えですか?

つばき:私、当時は子宮が女の象徴だと思ってたの。いまみたいにネットで何でも調べられる時代じゃなかったし、女性の体の仕組みもよく知らないまま手術しました。子宮を摘出したら「ヒゲが生えてきちゃうんじゃないの?」って思ってた(笑)。その後も、自分は子宮を取ったから更年期が軽いんじゃないか、とすら思ってたんです。

――子宮がなくても卵巣が残ってれば更年期、来ますものね。

つばき:女性の体の仕組みについて初めていろいろ勉強したのは、更年期の学会の試験を受けることにしてからです。母が亡くなって、最初の母の日でした。卵巣があって子宮があって、ホルモンは卵巣から出ていて、だから子宮を取っても更年期があるんだって、そのとき初めて知った。そういう意味で、卵巣やホルモンも「女」ですよね。

ここ数年、物忘がひどくなったり体の痛みや手足のしびれから起き上がれなかったりしたのは、全部更年期だったんだって初めて知りました。手術から10数年も経ってからのことです。更年期、最近は軽くなってきました。けどまだ性欲はあります。とはいえ、男にコンドームなしでやろうといわれるのはヒク。「精液を入れたほうが更年期が軽くなるからナマでやろう」ってパートナーにいわれたことありますよ。

――ハハハハ(大爆笑)! なんじゃそりゃ~!

つばき:女性ホルモンは、男がちんぽで活性化できると思ってるヤツらがいっぱいいるんですよ! 私はあんまり男対女の対立構造を強調するのは好きじゃないんですが、この問題に関してだけは、もうちょっと男性も一緒に勉強してもらわなくてはいけませんね。

子宮摘出後のポルチオ
――子宮を摘出しても、セックスでのオーガズムは可能でしょうか?

つばき:セックスでイクっていうのは、私は子宮をとってから本格的に体験しました。

――むしろ取ってからのほうが快楽が深くなったんですね!

つばき:それまでもクリトリスを刺激すればイクんだけど、ほんの一瞬の“点”のようなオーガズムでした。何度も続くガッとくるオーガズムは、骨盤底筋群が収縮しないとできない。大事なのは骨盤底筋群! これは子宮を取っても私のなかに存在していますから。この筋肉の塊も女として重要な役割を果たしていると最近、痛感します。

――『ゲスママ』には、子宮摘出後、神田さんがポルチオを感じられた様子が書かれています。この「子宮にちんぽが届くまで」という連載は、子宮がなくなったらポルチオはどうなるんだろう? という私個人の疑問が発端となっています。ポルチオがどこにあるのかぜひ教えてください。

つばき:ポルチオってね、子宮口の周りなの。子宮を摘出したあとの膣は縫い縮めるから、ポルチオは残っています。子宮口って、ふだん閉じているの。縫い縮めた部分が、それ似た状態になっているらしいです。『ゲスママ』で書きましたが、フィストファック好きな産婦人科の先生にそこを撫でられたとき、ちゃんと気持ちよかったですよ。

――おおお、そうなんですか! 「あっ、ここにある」ってはっきりわかったんですか?

つばき:あれ、気持ちよかったな~。ええ、わかりますよ。あ、こういうことなんだって思いましたね。「わかる? いま撫でてるところが子宮口だよ、ちゃんとあるんだよ」って先生が教えてくださって。

――摘出しても、ポルチオ、あるんですね! 子宮がなくなった後、ポルチオはあるのか・ないのかがずっと疑問だったんです。けどご著書を拝読して、「ここに答えが書いてある」と衝撃を受けました。この事実に勇気づけられる女性は大勢いると思います!

子宮信仰的な何かがある
――いまだに日本では、子宮は「女性の象徴」と神聖視されています。

つばき:本当、女性にとって出産後は罰ゲームみたいよね。子どもを産んだら「子どもを産んだからスタイルが崩れたのよ」っていわれるし。産んでないと「子どもいなからわからないんだよ」っていわれる。そういう考えの中心に、子宮信仰的な何かがある気がしますね。子宮を絶対視する、みたいな。いまでも世の中は、子宮だけが性器だと思ってる。たしかに赤ちゃんが入ってるその期間は神聖だと思うけど、妊娠・出産に必要なのは、子宮だけじゃない。世間が、観念として「子宮子宮」といってるように見えて、乱暴だな、って思うんです。

――子宮って物理的にはちっぽけなものですよね。私が摘出した子宮は、こぶしよりも一回り小さかったそうです。

つばき:私も子宮、見たかった! 手術のとき、写真にも撮ればよかった!私は見なかったせいで、すごく「奪われた」感が強かった。盗まれたかのような気持ちでした。そのときはショックを受けるかもしれないけど、見たほうがいいですよね。

――はい、そう思います。

*   *   *

 母性や更年期、さらにはセックスにも関連づけられることの多い子宮。だけど神田つばきさんのお話をうかがうと、ひょっとしたら、それらのどれとも子宮は関係ないんじゃない? という思いがますます強くなっていきます。

 次回、中編では、子宮摘出後に神田さんが出られた「性の冒険」について詳しくうかがっていきます!

最終更新:2017/07/29 08:56
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