カルチャー
太田啓子弁護士インタビュー第1回

おばさんの胸なら触っても問題ない? 性暴力の実態からかけ離れている法の不備

2016/11/29 15:00

■法律のあり方が、性暴力の実態からかけ離れている

――本件で「性的色彩は薄い」というのは、本当によくわかりません

太田 「ステージ上、大勢の観客の面前で行われ」たから「性的色彩は薄い」って、「ショー的だった」ということなのかなと思うんですが、そんな「ショー」に女性は同意なんてしておらず、いきなり触られたわけです。それなのに「性的色彩は薄い」とは、ちょっと信じがたい発想ですね。

 あまりに信じがたいので、被疑者が町長という立場にあったことに「配慮」したのかなと思ってしまいますね。そういうのも、少しあったのかもしれません。あってはならないことですが。

 いずれにせよ、本当に被害者本位の法律運用ではないとも感じました。何歳になったって、いきなり人前で胸を触られるなんて、嫌に決まってるじゃないですか。やはり法律運用者が十分に性暴力の本質を理解しなければ、きちんと性暴力を裁くことはできないと、つくづく思いました。

――そもそも、2件目は「強制わいせつ罪」ではなく「迷惑防止条例違反」の容疑だったというのも、考えてみたら、よくわからないのですが。

太田 強制わいせつ罪の成立要件である「暴行又は脅迫」が認められないから、ということではないかと思います。

 2件目は、突然胸元に手を入れるという、まさに「不意打ち」で性的接触をしたということではないかと思うのですが、そういうのを「暴行又は脅迫」がないから「強制わいせつ罪」にはそもそも該当しない、という法律のあり方が、性暴力の実態からかけ離れていると考えています。
(蒼山しのぶ)

(第2回につづく)

太田啓子(おおた・けいこ)
国際基督教大学卒業、2002年に弁護士登録。「神奈川県弁護士会」「明日の自由を守る若手弁護士の会」所属。主に家族関係、雇用関係、セクハラ、性犯罪問題などを取り扱う。「怒れる女子会」や「憲法カフェ」などの活動を通じて、セクハラや憲法改正についての問題提起も続ける。
湘南合同法律事務所

最終更新:2016/12/09 21:19
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