芸能
イケメンドラマ特捜部【ジャニーズ&イケメン俳優】

『いつ恋』で魅力的だったAAA・西島隆弘の芝居――朝陽の誠実さと葛藤が伝わる名場面

2016/04/01 19:00

◎朝陽の微妙な変化を表現
 朝陽は、ヒロインの音をめぐって主人公と対立する恋のライバルだ。だから、いくらでも悪く描こうと思えば描ける役柄だが、西島の芝居が抑制されたものだったため、一見すると誠実な青年にしか見えない。しかし、会話の節々に父親のような傲慢さが滲み出るという微妙な変化を見せることで、この人は、本当にいい奴なのか? という疑問が少しずつ積み重なっていく。

 まったく態度が変わらなければ変化がわからないが、極端な豹変を見せれば、リアリティが失われてしまう。一見わかりにくいがすごく難しい芝居を、西島は要求されていた。第9話、ジャーナリスト時代に知り合った弁護士と朝陽は再会する。朝陽の記事によって医療裁判に勝利できたことを懐かしく話す弁護士だったが、依頼人が訴訟を起こしている企業の代表が朝陽だとわかると、一気に気まずくなる。

 その後、父から叱咤激励されるが、その時の落ち込んだ表情は、さまざまなことを見ている側に想像させる。やがて朝陽は「もう、嘘はつきたくない」と、今の自分が抱えている苦悩を音に伝える。そして「一緒に生きよう」とプロポーズする。この三場面の流れは、朝陽が抱える葛藤が伝わる見事な芝居だった。

◎誠実さから傲慢への切ない変化
 西島は、パフォーマンスグループ「AAA」(トリプルエー)のメインボーカルを務めていており、Nissyという名義でソロとしても活動している。俳優としては09年に公開された園子温の映画『愛のむきだし』で、満島ひかりや安藤サクラと共に大きく注目された。歌手活動が中心のため、13年のNHKドラマ『太陽の罠』で主演を務めて以降は、ドラマ出演はなかったが、今回『いつ恋』に出演したことで俳優としてあらためて評価されることだろう。

 『愛のむきだし』で印象的だった、ダンスで鍛えた身体能力の高さは、会話劇が中心の『いつ恋』では生かす場所がなかったが、繊細な感情の機微を見せる憂いを帯びた表情は視聴者を魅了した。29歳にしては幼い顔立ちで、しゃべればしゃべるほど子どもっぽさが際立つ。そんな朝陽が父に気に入られたいがためにじわじわと傲慢に変わっていく姿は、邪念がないだけに見ていて切ないものがあった。

 放送話数が足りなかったからか、一番の見せ場に成り得た父との直接対決が描かれなかったのは残念だったが、最終話で、音のことを想って、自ら別れを切り出すシーンは素晴らしかった。歌手活動との両立を考えると、俳優活動にどこまで力を入れるのかは、まだわからないが、次回作が見たいと思わせる好演だったと言えよう。
(成馬零一)

最終更新:2016/04/01 19:08
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