カルチャー
[女性誌速攻レビュー]「DRESS」1月号

休刊決定の「DRESS」、一度置いた「卵活」「妊活」神輿をなぜ再び担ぎだしたのか?

2015/12/22 20:45

■安保問題を語りだした「DRESS」

 「小島慶子の大人の学校」では、「集団的自衛権の議論はなぜもやもやするんですか?」と題して、憲法学の木村草太さんから話を聞いています。この議論に関して疑問を持っていた読者は多いのではないでしょうか。「ファッション誌に欠かせないのは占い、ないのは政治のページ」と言われていますが、最近はさまざまな女性誌でこの安保問題を取り上げています。

 “女性誌”で安保問題を取り上げる場合、どういった切り口になるのでしょうか。例えば、女性は基本的に身の回りのことに注意を払うのが得意と言われています。つまり政治家のおじさんたちの権力抗争には興味がなくても、自分の家族が戦争に巻き込まれるかもしれないという身近で想像しやすい悲劇には関心が高いということから、より今の暮らしに沿った内容で安保問題を解説してくれるのかな……と思っていたわけです。しかし正直、読んでいっそうもやもやしました。とにかく難しいんです。まずは使っている言葉。木村氏は「日本国民の8割は憲法を技術的に捉えています」と言っているのですが、「技術的に憲法を捉える」の意味がピンときません。一つひとつの言葉が難しいので、常にハテナを頭に浮かべながら読んでいました。

 そして話の半分以上は「集団的自衛権の行使は憲法第9条の違反なのか、違反なら憲法自体を改正することは問題ないのか」といったこと。これももやもやする理由の1つです。先ほど述べた、「女性誌で政治を扱うときの視点」から考えるに、読者が知りたいのは「いま、なぜ安保改正が必要なのか」「反対派は、現状の法律のままで、虎視眈々と日本の領土を狙う国々にどう対処していくつもりなのか」といった自分に身近な話題ではないのでしょうか。そして読者は、細かな調整が十分に議論されないまま強行採決されたことへの疑問を抱えているように思うのです。

 しかしこの記事では「国際問題に関心を持つことが大事」と言ってはいますが、具体例は1つもありません。最後は「平和ってそもそも何? 今は本当に平和なの?」と考えることが大事、と結んでいます。「国際問題に関心を持て、そして考えろ」と読者に丸投げです。まぁ筆者も、そういう気力や情報収集能力がないからもやもやしているのですが。

 この記事を読んで、創刊時の「DRESS」を思い出しました。あの頃ターゲットになっていた、ハイソでバリキャリの女性たちなら、この記事を読んで納得し、意味がわかるんじゃないかと思ったんです。そして「関心を持って調べて考えろ」と言われなくても、すでにやっているような気もします。そうした知識と自分の考えを持った上でこの記事を読んだら、もやもやが吹き飛んだかもしれませんが、ターゲットを見失った今の「DRESS」では、浮いている記事に思えました。

 木村氏の専門は憲法学とあるので、憲法第9条についての話に特化するのは当然の流れだと思います。しかしそれを読者のレベルにまで引き寄せるのが、編集やライターの仕事。バリキャリ路線を捨てたかに見えた「DRESS」でしたが、少なくともこの記事の読者の知的レベルは、ずいぶん高めに設定していそうです。

 今までさんざん「迷走している」「カラーがない」と書いてきましたが、やはりこの記事の読者に求められている知的レベルを見ると、「これだ」という明確なターゲットが見えていないか、もしくは企画をコントロールする技術が足りないのかな、と感じます。一体「DRESSな女」とはどういう女だったのか、やっぱり謎のまま最終号を迎えるのでしょうか。
(増井涼子)

最終更新:2015/12/22 20:47
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