コラム
仁科友里の「女のためのテレビ深読み週報」

堺正章という“ややこしいオッサン”に慣れない森星に感じた、女子アナ・小林麻耶の本当の実力

2015/04/30 21:00

 枡田アナと小林アナは特にすごい。例えば、枡田アナは「(堺は)番組を20年もやっているのに、意外と料理の腕は上がっていない」と爆弾発言をするが、堺はニコニコして、「キミィ、当たってるね」と上機嫌である。小林アナは「巨匠は熱いものの時にレンジ台から腰が引けるので、押すといいと思います」非礼全開だが、堺は不機嫌そうなそぶりは見せない。

 ここまで言っていいのなら、何でもありかと思うが、木村アナが「巨匠はみじん切りや千切りが嫌いで、カメラに映っていないところで私に押しつける」と発言したところ、堺は「あのね、カメラワークを僕は完全に研究したの」と完全に不機嫌顔になっていた。「腕が上がっていない」発言はオッケイで、「みじん切りが嫌い」がなぜにお気に召さないか理解できないが、ともかく、堺のNGラインはわかりにくいのだ。

 単に枡田アナと小林アナが好みだ、という可能性もあるが、堺と親しくしていることを公言している次長課長の河本準一が「怒りのツボがよくわからない」とラジオで発言していたことがあるので、恐らく、もとからちょっと難しい性格なのだろう。

 「好みだから暴言が許されている」可能性はさておき、特筆すべきは、堺のお気に召す、枡田アナと小林アナの観察眼である。枡田アナは「堺はイケメンゲストが来ると、張り合うところがある」と述べ、小林アナは「堺は鼻の高い女性が好き」と分析した。堺はイケメンに張り合う自覚はあったが、小林麻耶の指摘には無自覚だったようだ。枡田アナのように、堺の好き嫌いを理解していれば、相手の嫌がることを回避できる。さらに小林アナのように、本人も気づかない趣味志向まで把握できれば、先回りして、相手を意のままに操ることができる。ぶりっ子キャラと独身ネタ以外、特にウリのないと見られている小林アナだが、これだけできれば、そりゃ仕事が途切れないはずである。

 ハワイ育ち(つまり帰国子女)のすみれ、世界的デザイナー・森英恵の孫娘でお嬢様女子大生の森には、「上司が望むから、あえて暴言を吐く」という入り組んだ「上下関係」に慣れていない。そのせいか、番組は盛り上がりに欠け、精彩を欠いているように見える。この番組は、堺を喜ばせるできるアシスタント(女子アナ)なしに、成立しないのだ。

 根幹を支えているものの、表には出てこない。あえて下を取り、主導権を握る。女子アナは、超オトコ社会日本に生きる働く女性の姿そのものと言えるだろう。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。
ブログ「もさ子の女たるもの

最終更新:2015/04/30 21:00
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