カルチャー
[サイジョの本棚]

友情と恋愛、道徳と背徳、同性愛と異性愛……恋愛に潜む曖昧さを浮き彫りにする5冊

2014/09/14 19:00

――本屋にあまた並ぶ新刊の中から、サイゾーウーマン(サイ女)読者の本棚に入れたい書籍・コミックを紹介します!

『恋愛3次元デビュー~30歳オタク漫画家、結婚への道。』(カザマアヤミ/双葉社)

 女子校育ちで、異性との交際経験はゼロ。その代わり、オタク活動と妄想を充実させて漫画家になったカザマ氏が、3次元の相手と恋愛・結婚したいと思い立ち、成人漫画家と出会い結婚するまでを、笑いを交えてつづるコミックエッセイ。

 大雑把に分けると婚活成功譚だが、単なるノロケ話にならないのは、「恋愛とセックスの知識元はだいたい二次元」だったカザマ氏が、試行錯誤するさまが赤裸々に描かれ、かつ自分を笑う視点を得ているからだろう。さわやかなイケメン会計士とのお見合いを経て「コミケを知らない人とできる話なんてない」とキッパリ悟る場面は、爽快ですらある。

 “世間にとっての理想の相手”が、自分と相性のいい理想の相手とは限らない。当たり前のことだが、“婚活”という枠組みに入り込んでしまうと、つい忘れてしまいがちだ。本来の婚活は、他人から理解されなくても、自分にとっての本当の理想の相手を見定めていくことかも、と笑いながら気づかせてくれる。

『盲目的な恋と友情』(辻村深月/新潮社)

 『恋愛3次元デビュー』の著者は、学生時代に彼氏を作れなかった理由の1つに、女同士の牽制・睨み合いに耐えられなかったことを挙げている。彼女ほどでなくても「女子にブリッコとみられたら生きていけない」という感覚に、覚えがある人は多いだろう。女性の恋愛と友情は濃く関わってくる。そんな女性同士の濃密な関係と作り込まれたサスペンスを味わえるのが、『盲目的な恋と友情』だ。

 圧倒的に際立つ容姿と穏やかでかわいらしい性格、家柄にも恵まれた蘭花。蘭花と同じサークルに所属し、優秀だが、容姿に強いコンプレックスを持ち、男からもウケが悪く、女友達との関係に救いを求めてきた留利絵。大学のオーケストラサークルを舞台に、2人それぞれの恋愛と友情が育まれ、やがてどちらもバランスを崩していく。

 本作で描かれる蘭花の恋も2人の友情も、はじまりは真っ当で美しい。美しかったからこそ、関係性が変わるべき時が来ても執着してしまう。今もまだ理想的な関係だと信じるために、綻びが見えても、無意識に現実を改変し、見なかったことにしてしまう――。そんな、自分で自分の視界をふさいでしまうような心理に覚えがある人は、彼女らの言動を他人事とは感じられないかも。思わず自らの「恋と友情」を振り返りたくなる、不穏な後味を残す作品だ。

『きみのために棘を生やすの』(彩瀬まる、窪美澄、千早茜、花房観音、宮木あや子/河出書房新社)

 女性作家が描く不穏な恋愛小説をもう1冊。5人の人気作家が「略奪愛」を描いた官能短編アンソロジー『きみのために棘を生やすの』。

 戦時下、死と隣り合わせの状況で婚約者以外の男と交わした官能を、平和で静かな部屋で回想する老婆の語り口が印象深い「朧月夜のスーヴェニア」。何となく主婦と不倫を続ける、どこか成熟しきれない男が、友人から一夜だけ奪った同級生と再会する夏を描いた「夏のうらはら」。不器用に奪われてばかりの女、自ら奪う女、男に奪わせることで自分を確かめるしたたかな女――切り口も読後感も全く異なる、5つの「略奪愛」が描かれている。

 「略奪愛」がフィクションとしては支持を受けるのは、欲しがられることで自分を確かめてしまう、人の暗い性分を刺激するからだろう。モラルを破るほど強い欲望に引きずられた人々の、官能がそれぞれ炙り出された短編集。時に不快で醜い、恋と官能の暗くて熱い一面を覗き込むことができる。

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