カルチャー
『ハウスワイフ2.0』ブックレビュー

家事に命をかける高学歴アメリカ女性たち、「ハウスワイフ2.0」が孕む危険なリスク

2014/04/27 16:00

 「シンプルで、環境にやさしく、やりがいのある生活を求めて、家庭にこもって家事に勤しみたい」──「ハウスワイフ2.0」と呼ばれる若い女性たちの思いは、アメリカ以上に厳しい就労・雇用環境にさらされている日本の女性も、身に染みてよくわかるはずだろう。

 ただ、「ハウスワイフ2.0」の生き方には、大きな問題を孕んでいる。自分でお金を稼ぐことをやめて専業主婦になれば、経済的には夫に頼らざるを得ない。将来、離婚するかもしれないし、死による別離が待っているかもしれない。それでも経済的に夫に依存するのは、あまりにも「リスクの大きな賭け」である。

 そもそもアメリカで「ハウスワイフ2.0」を選択するのは、「高学歴で進歩的な女性」ではあるが、だからといって彼女たちは“富裕層”ではない。「ハウスワイフ2.0」の中心を担っているのは、“中流階級の人々”だ。

 富裕層ならば、まず不況への不安が薄い。そして、健康・環境に配慮したエコ生活を送るのも、自分の考える最高の教育を子どもに与えるのも、大体はお金が解決してくれるので、わざわざ会社を辞める必要などないのだ。それができない中流階級だからこそ、家庭生活や親であることを軽視する企業に愛想を尽かし、専業主婦を選ぶ。「ハウスワイフ2.0」は、「自ら選び取ったライフスタイル」といわれているが、その実、社会階級により「選ばざるを得なかったライフスタイル」という一面もあるのだ。

 この「ハウスワイフ2.0」現象は、日本でも起こる日はそう遠くはないかもしれない。だが、安全な野菜を求めて畑を作っても、公共の学校への不信感から理想的な教育を追求しても、家庭の中で解決するだけでは社会は変わらない。そして、女性が外での仕事をあきらめてしまえば、企業における給与や産休問題など、社会の体質もそのままになってしまう。さらには、男性への仕事の重圧が増し、女性と同様に男性も抱くであろう「家庭を大事にしたい」という願望も、果たされぬのではないのだろうか。

 「男性も女性も、仕事と家庭を両立して、自分の価値観にしたがって生きられるようにするには、やはり社会を変えていかなければいけない」

 そう語る著者自身は、会社に使われるだけの存在から脱却した「ハウスワイフ2.0」を肯定しつつも、女性の経済的自立や、社会へ出て行くことを推奨している。「ハウスワイフ2.0」がさらに進化していくためには、女性が家の中から一歩外に出なければいけないということかもしれない。そしてこれは、今の日本にも十分当てはまるだろう。

最終更新:2014/04/27 16:00
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