コラム
[連載]そうだソルティー京都、行こう

京都の知られざる名寺・千光寺を彩る、「怪しい看板」と「やり手住職」の存在

2013/10/30 19:00

 山頂に着くと、小さな境内の周りを建物が囲んでおり、慎ましさが漂う。わびしい山寺といった風情だ。御堂にごちゃごちゃと並べられた像だのなんだのは、ここが割と歴史がありそうなこととか、整理整頓が苦手そうなこととか、いろんなことを教えてくれる。新しい建物の方からは、京都市内が一望できる。そこからは、京都の名所が全て見られるのだ。京都タワーなんかに負けないぞ。

境内にある新旧2つの建物

 しかし到着してからの千光寺の魅力は、なんといってもそこにいる人である。行くたびに違う人が留守番していて、行くたびに住職は留守なのだ。先日行った時のお留守番おじさんは、地元の大工さんらしく、善意で参道に手すりをつけてあげたら、それ以来留守番を頼まれるようになったとか。無料で工事させた上に仕事まで頼むとは、とんでもなくやり手の住職である。

 数年前に行った時には、自転車で旅行しているという若い男性がいついていて、寺の由縁だの京都の景色だの、めっちゃ観光ガイドしてた。やっぱり住職はいなかった。ちなみに道ばたを賑やかしている看板は住職が書いているらしいので、毎日どこかで新たな看板を作っているのでしょう。

 このひっそり感がいいらしく、数は少ないけれども固定ファンがいるそうな。自転車旅行中の若者もそうだし、作家の北森鴻氏も千光寺のファンだったとのこと。『裏京都ミステリー』(光文社)という推理小説に出てくる「京都屈指の貧乏寺」は、ここがモデルなんだとか。……貧乏寺。わびしいとか慎ましいとかひっそりとか、非常に洗練された表現だったわけだ。

この竹の手すりを、お留守番おじさんがつけてくれたのね

 というわけでみな様、この貧乏寺をもうちょっと豊かにするべく、このソルティーなお寺に是非立ち寄っていただきたい。あ、そうそう、室内にはお茶を出してくれそうな器材はたくさんあるんだけど、実際にもらったことはないので、水分を忘れずにお持ちいただきますよう。

和久井香菜子(わくい・かなこ)
ライター・イラストレーター、少女漫画研究家。『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)が好評発売中。ネットゲーム『養殖中華屋さん』の企画をはじめ、語学テキストやテニス雑誌、ビジネス本まで幅広いジャンルで書き散らす。街で見かけたおかしな英文から英語を学ぶ「Henglish」主宰。

最終更新:2019/05/21 18:36
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