カルチャー
[女性誌速攻レビュー]「SAKURA」秋号

なれそうでなれない“全方位好感度ママ”を掲げる「SAKURA」の息苦しさ

2013/09/18 21:00

■「ミランダ・かあさん」の真骨頂

 しかし上記のファッションマトリックスも、ライバル誌である「VERY」(光文社)とも「LEE」(集英社)とも「nina’s」とも違う、「コレぞSAKURA」というのを示したいがためのパフォーマンスとも考えられます。それだけ雑誌としての個性をつかみかねていると申しましょうか。そもそも「コレぞ」というものがあれば、わざわざ「全方位」というアブナイ表現は使わないはずなんです。

 たとえば「SAKURA」のあちこちで見かける「HM」の文字。これはホットケーキミックスでもほっともっとでもなく、「ホットママ」なるカリスマ読者たちのことらしいのですが、やっぱり言葉の射程範囲が広すぎて意味が伝わりにくい。そんな「SAKURA」のコンプレックスを象徴しているのが「二子玉系ママVS葉山系ママ それぞれの真っ先買い! 秋トレンド」という企画。HMたちを束ねる番長、HMリーダーズとスタイリストが気になる秋のアイテムを紹介しておりますが、問題はこの「二子玉系」と「葉山系」という分類の仕方です。ざっくりといえば「二子玉系=コンサバ」「葉山系=ハンサム」。「SAKURA」といえば、ZEEBRA妻の中林美和など、「昔ギロッポンあたりでブイブイ言わせてたヤンチャモデルが出産を機にナチュラル志向に走り、とりあえず湘南方面へ」というイメージですよね。だったら潔く「葉山」で統一させてしまった方が、より個性は引き立つような気がします。もともとは二子玉川は「VERY」の縄張りですしね。この限定しきれないところに、「SAKURA」の混乱があるのではないでしょうか。

 そう考えると、もういっそのこと「なれるものなら“ミランダ・かあさん”」のような完全出オチを厭わない企画の方が、ミーハー臭のある「SAKURA」らしくていいのかもしれません。ただミランダ・カーのプライベート写真をそのまんま、それこそ抱いてる赤ちゃんまで再現しただけという、本格的なタイトル出オチ。しかし最後に突然「あなたもミランダ・カーになれる!? 美くびれ・美ヒップをつくる下着はコレ」と矯正下着を登場させて面目躍如。ママ雑誌と矯正下着の相性の良さったらないですよ!

 おしゃれでセンスが良くて家事もバッチリの家族思いなママになりたい。話がわかるサバサバした女になりたい。パパの熱い視線を集め続ける妻になりたい。しかしそれ以上に、誰かに「嫌われたくない」。巻末にひっそりと置かれた「全方位好感度ママの『心の叫び』、回収します!」というページに、高い理想に苦しめられているママたちの本音がありましたので、最後にご紹介したいと思います。

「家柄や経済環境の差を見せつけられると、夜も眠れないほど悔しい」
「送迎とおけいこも公園遊びもランチも一緒。はっきり言ってうんざりだけど、もめたくないから言い出せない」

 「SAKURA」が掲げる「全方位好感度ママ」は、たとえば一流企業の管理職をこなしながら子育てをするとか、玉の輿に乗って優雅なセレブライフを送るとか、わかりやすく高いハードルでは決してありません。しかしこの「(気の持ちようで)誰でもなれる」というプレッシャーは、じわじわ真綿のようにママたちの首を絞め上げるのではないでしょうか。自分で仕掛けた罠に自分が引っかかって、もがいているような。「SAKURA」の、いやママ雑誌の罪は深いです……。
(西澤千央)

最終更新:2013/09/18 21:00
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