「bis」編集長インタビュー

「笑顔はいらない」「bis」編集長・中郡暖菜が語る「媚びない女性ファッション誌」の作り方

2017/07/22 19:00
bis-zenpen020720
話題を呼んだ「bis」創刊号

 大学時代から「小悪魔ageha」(インフォレスト~ネコ・パブリッシング)編集部のアルバイトを経て、2012年に「LARME」(徳間書店)を立ち上げ、弱冠26歳で編集長になった中郡暖菜氏。アイドルの起用や世界観重視の誌面など、それまでの女性ファッション誌にあまり見られなかった大胆な手法で、同誌を創刊1年で発行部数20万部のヒットに導いた。昨年秋に「LARME」編集長を退任し、今年より雑誌「JJ」(光文社)の妹誌である「bis(JJ bis)」の11年ぶりの復刊を手掛け、編集長を務めている。5月25日に発売されたプレ創刊号「bis」の表紙は女優の志田未来が飾り、夢野久作の小説をモチーフにしたフォトストーリーが巻頭特集となっている。明らかに現在の女性誌とは一線を画する作り方だ。

 今後の女性誌カルチャーを担うキーパーソンである彼女は現在の女性誌、女性向けウェブサイトをどう見ているのだろうか?

◎「小悪魔ageha」から脈々と続くギャルマインド

――まず「LARME」を離れ、「bis」復刊に携わるようになった経緯を教えてください。

中郡暖菜氏(以下、中郡) 「LARME」を昨年の秋に辞めてから、いくつかお話をいただいたのですが、以前光文社で本を作ったことがあった経緯があったことと「bis」(当時は「JJ bis」)のことが読者として大好きだったということがあり、「bis」の復刊をやらせていただきたいという話をしまして、今回編集者として新たな挑戦ができることとなりました。また、今まで(出版社に)女性ファッション誌がほかにあるという環境を経験したことがなかったので、女性ファッション誌が強い出版社で、ほかの世代の女性誌の作り方も学びたかったという気持ちもあります。そうじゃないと編集者として続けていけないと感じたからです。

――雑誌ではなくウェブの編集者という選択肢もあったと思います。「bis」はウェブ展開もされていますが、あえて雑誌を作る理由とは?

中郡 まず自分自身が紙の本が好きなんです。あと、私が「LARME」を作ってから5年がたちますが、その間に出てきた若い世代の女性誌がほとんどないんですよね。「LARME」くらいのボリューム感になった雑誌は私が知る限りないと思いますし、むしろどんどん休刊していっている。新しい媒体を作ることのできる編集者、出版社がないということに危機感があり、今作らないと新しい雑誌やカルチャーなんて、この先ずっと生まれないんじゃないかと。

――「LARME」創刊の時も同じような危機感は感じていましたか?

中郡 いいえ。「LARME」立ち上げのきっかけは、本当に個人的なことなんです。母が病気になってしまって、当時は「小悪魔ageha」編集部にいたんですけど、自分の作った本というものを母に見てほしかった。

――つまり「今後ド派手なギャルよりも、ガーリー系がはやる兆しがあった」と流行を察知して作ったわけではない。

中郡 全然違いますね(笑)。

――偶然の産物だったと! それもすごい話ですね。以前在籍していた「小悪魔ageha」は社会現象を起こすほどの「盛り髪」「つけま」「カラコン」なギャル雑誌でした。そこからパステルカラーなガーリー路線の「LARME」になるのは、ギャップがすごいですよね。

中郡 あまりそう見られないのですが、「LARME」も一種のギャルでしたし、私自身もマインドはすごくギャルなんですよ。今でもユーロビート聞いていますし(笑)。「小悪魔ageha」は最先端のギャル雑誌でしたが、正確には「ギャル」と「ヤンキー」のミックスですよね。中條寿子さん(初代編集長)がヤンキー要素のあるギャルだったのですが、私はヤンキー要素が一切なくて特攻服とかバイクに興味がないタイプ。「ホットロード」(集英社)や「チャンプロード」(笠倉出版社)などヤンキーカルチャーの作品をいろいろ貸してくださったのですがいつも「はて?」という感じでした。逆に自分はジーザスディアマンテを着てパラパラを踊っているタイプの姫ギャルだったので、中條さん的には謎に感じていた部分もあったと思うのですが、「小悪魔ageha」ではその両方が受け入れられていました。「ギャル」と「ヤンキー」は似ているようで、きっとまったく別の文化なんですよね。

bis(ビス) (光文社女性ブックス VOL. 163)
笑顔に力があると思うのは男目線よねー
アクセスランキング