「bis」編集長インタビュー

「笑顔はいらない」「bis」編集長・中郡暖菜が語る「媚びない女性ファッション誌」の作り方

2017/07/22 19:00

音楽から企画のイメージを考え、圧倒感のある誌面作りを

――雑誌を作る上で一番大事にしていることはなんですか?

中郡 2つでもいいですか(笑)。1つは一冊を通してのバランスというか緩急です。例えば、一冊の雑誌を作る時に一個一個の特集にテーマ曲をつけて、ライブのセットリストみたいに本の流れを考えています。台割表にも曲名を入れて。そうじゃないと1人で考えているからか企画の雰囲気が似ちゃったり、気持ち悪い流れになっちゃったりするんですよ。今回のライブは華やかなアップテンポの曲から始めたい時と、マニアックでダークな曲から始めたい時と、ライブ全体の仕上がりイメージによって構成は変わってくるじゃないですか。それと同じですね。自分が音大出身なのもあるかもしれないですけど、音楽と関連付けていることは多いです。

 もう1つの雑誌を作る上で大事にしていることは「圧倒感」です。人によっては「bis」と「LARME」が近いと感じるかもしれませんが、私的には結構違う要素を入れています。「LARME」も独自の世界観があるので、そういった「LARME」の時に成功したパターンみたいなものはあえて「bis」には入れていないというか。甘さは抜いたつもりです。前と同じようなことをして普通にそれでやればなんとなく数字も読める部分もあるんですけど、平和な本を作る気はないというか。

 独特の個性がない本をいまさら作っても意味がないし、どこかで見たことのある感じの本になったらつまらないですし、そうじゃないと本を作るモチベーションにならない。この時代に本を出すのであれば「圧倒感」みたいなものは大事にしたいです。

――お話を伺っていると、物作りに対するこだわりを感じますね。少し嫌な質問になりますが、商業媒体でやっている限り、雑誌の売り上げは切り離せないじゃないですか。そことの兼ね合いはどうお考えですか?

中郡 もちろんバランスをとりたいと思うけど、数字のことはすごく苦手で、ほとんどわからない。だからとにかく精いっぱいやるしかないんですよね。計算してここまで頑張ろうじゃなくて、計算したくないしできないから限界まで頑張るしかない。限界まで頑張ってダメだったらその時は骨を拾ってください、という感じで。売り上げに関しても、売るためにどうするかみたいなことはあまり考えていないです。発売直前だけはめちゃくちゃ不安になりますが、基本楽観的ですね。

――頭で考えるより、とにかく全力を出すというスタンスにギャルマインドを感じますね。

中郡 あとは、私自身があんまりサブカル人間ではないというか、L’Arc~en~Cielや村上春樹さんが好きな人間なので、ニッチな嗜好ではないと思っていて。そこを突き詰めれば、届く人たちというか、コンサバほどじゃないけどサブカルでもない層は多数派ではないかもしれないけれど、割と大きな分母で存在しているんじゃないかなと思っています。

(後編につづく)

中郡暖菜(なかごおり はるな)
1986年2月10日生まれ、千葉県出身。国立音楽大学卒業。26歳の時に徳間書店史上最年少での編集長就任で「LARME」を創刊し、ヒットへ導いた。2017年より「bis」(光文社)の編集長を務める。
・「bis」オフィシャルサイト

最終更新:2017/07/22 19:00
bis(ビス) (光文社女性ブックス VOL. 163)
笑顔に力があると思うのは男目線よねー
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