東京都で始まった性暴力救援ダイヤルNaNa ワンストップ支援はなぜ大事?

 7月15日より、東京都で「性暴力救援ダイヤル NaNa(ナナ)」が始まりました。「NaNa」とは「Not alone, Not afraid(=もう1人じゃないよ、恐れずに連絡して)」のこと。民間支援団体と連携し、24時間365日確実に相談の電話を受け付ける体制が構築され、性犯罪・性暴力にさらされている方々を支援することが狙いです。

 性犯罪とは(準)強姦罪、(準)強制わいせつ罪など刑法で定められた犯罪であり、一方の性暴力には明確な定義がなく、より広義な「性的な言動による暴力」となります。今回の支援事業が「性暴力」と銘打っているのは、「性犯罪」に該当しなくとも、性的な被害に悩んでいる方への相談を受け付ける意図があると考えてよいでしょう。

◎一日に250件以上の性暴力被害!?

 日本では、どれだけの性犯罪・性暴力が起きているのでしょうか。参考までに、性犯罪の認知件数のうち「強姦・強制わいせつ」の認知件数の推移をみると、平成25年は9063件(うち強姦1409件、強制わいせつ7654件)。件数は減少傾向にあり、例えば9年前の平成16年は11360件(うち強姦2176件、強制わいせつ9184件)もの「強姦・強制わいせつ」が認知されていました(https://www.npa.go.jp/toukei/seianki/h25hanzaizyousei.pdf)。

 ただしこれは「性犯罪」の定義における一部の犯罪に過ぎません。今回の相談事業で受け付けている「性犯罪・性暴力」のうち、その他の「性犯罪」、例えば「集団(準)強姦罪」などの罪や、より広義で、「性犯罪」よりも日常的に行われているであろう「性暴力」も含まれていません。また性犯罪は、他の犯罪に比べて被害者が名乗りを上げにくいという特徴もある。「性犯罪・性暴力」の被害者はこの何倍もいるだろうと推測されます。

 それを裏付けるデータとして、法務省が平成20年に行った「犯罪被害実態(暗数)調査」によれば、性的事件の被害(強姦(未遂)、強制わいせつ、痴漢、セクハラなどの不快な行為)にあった人の被害申告率はおよそ13%しかありません。「強姦・強制わいせつ」よりも広義のため、あくまで参考値でしかありませんが、単純に計算すると、おおよそ平成25年には96,715件の「性犯罪・性暴力」が行われたと考えられます(http://www.moj.go.jp/content/000010429.pdf)。

 1年に97,615件ということは、一日に250件以上の「性犯罪・性暴力」が行われているということです。

◎掲げられた支援体制の成果目標はまだ達成されていない

 性犯罪・性暴力被害者は、産婦人科の診察やカウンセリング、加害者の特定や被害状況を把握するための捜査など様々な支援が必要となります。被害者はすでに被害を負った時点で肉体的、精神的ダメージを深く負っていますから、余計な負担をかけないためにも円滑な支援体制を組むことが必要です。そこで、ひとつの窓口に申告すれば、ワンストップで支援が行われる事業として、東京都が「性暴力救援ダイヤル NaNa」を始めたというわけです。

 日本には現在、4カ所の「ワンストップ支援センター」が設置され、「性犯罪に関する相談を受けていることを明示して相談を受けている男女共同参画センター」のある都道府県は22つあります。平成22年12月に掲げられた「平成27年までに各都道府県に最低1カ所」という成果目標は十分に達成されているとはいえません。

 こうした中で、支援センターがどのような相談を受け付けており、なにをしているのか、どれだけの実績があるのかがわからず、相談を躊躇う方も少なからずいるでしょう。そこで「ワンストップ支援センター」ではどのような取り組みが行われているのか、全国に4カ所ある「ワンストップ支援センター」のうち、佐賀県と神奈川県の取り組みを紹介している内閣府男女共同参画局が「性犯罪被害者支援に関する調査研究』報告書」を見てみましょう。

◎性暴力救援センターさが さがmirai

 佐賀県にある「性暴力救援センターさが さがmirai」は、強姦被害にあった未成年女子の診察をした医師が心の傷を心配して、県DV総合対策センターに支援の必要性を訴えたことをきっかけに設置されました。

 佐賀県では支援の3つの柱として「医療的支援」「精神的支援」「経済的支援」を掲げ、相談者に必要とみられる支援内容に応じて、ハローワーク、臨床心理士、産婦人科、弁護士、社会福祉士などの各所相談機関に連絡し、ケアを行っています。

 相談窓口は、医療センターの「好生館」にある「さがmirai」と「佐賀県立男女共同参画センター アバンセ」。業務時間内の相談を受け付けていますが、「急性期(被害直後から妊娠した場合の中絶ができる概ね6カ月)」は、24時間体勢の医療対応を行っているようです。

 総合的な支援を、たったひとつの窓口に電話することで受けることが出来る。自らの被害状況を把握し、適切な機関を選び、それぞれに相談をせずに住むという点で非常に負荷の少ない支援のあり方だと思います。

 平成24年7月から平成25年6月末までに、電話・来所あわせて202件の相談を受けており、その多くが「強姦・強制わいせつ」となっていますが、過去の性暴力被害やDVなどの相談実績もあります。

 現在は、任意の証拠採取・保存は行っておらず、検討課題として掲げています。

◎わかやまmine

 神奈川県の「わかやまmine」は、県内弁護士会が大阪府にある「民間団体 性暴力救援センターSACHICO」を見学した後に、県知事に直接提言をしたことで設置の検討が始まっています。

 「わかやまmine」への来所・電話による相談を受け付けており、その後、医療支援や捜査関連支援、心理的支援、法的支援を行います。産婦人科など医療機関、県精神保健福祉センターや民間被害者支援団体や、弁護士や臨床心理士などと連携をしており、「さがmirai」同様、まさに「ワンストップ」の支援が受けられるようになっています。また男性の被害者の相談を受ける「りぃぶる」という窓口を「わかやまmine」とは別に開設していることは特筆すべき点でしょう。

 また「わかやまmine」は、警察への届出をためらう被害者には、任意で証拠採取を行っています。ここで採取された証拠は冷凍庫で保存され、その後、必要となった場合に警察に提出されるようです。

 対応実績は、平成25年7月から11月末で61件。内訳は資料内に記されていませんでした。

◎まずは各都道府県の窓口にアクセスしてみて

 ここで紹介した支援センターは性暴力に特化した相談窓口でしたが、各都道府県には、性暴力被害についても相談を受け付けている窓口をもつ支援センターが複数設置されていますし、また「ワンストップ支援センター」の設置に取り組み始めている都道府県も数多くあるようです。

 性暴力被害の被害申告率が13.3%しかない現在、被害者が安心して相談できる窓口が設けられることが、性犯罪・性暴力の被害実態を把握し、その対策を練ることに必要不可欠となります。なにより相談も警察にも届けられず、ひとりで苦しんでいる被害者のためにも、こうした取り組みが広がっていくことを期待します。

 改めて、東京都の「NaNa」は24時間365日相談に対応しています。都内全域に、65の協力医療機関が確保されており、その他専門的な機関も必要に応じて繋げられるとのことです。性犯罪・性暴力でお悩みの方は、ぜひ各都道府県の相談窓口ページにアクセスしてみてください。
(水谷ヨウ)

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